また、基礎自治体議会において、議員が3回とも理由なく欠席したために構成議会が成立せず、しかもその議員ポストを補欠候補で埋めることができない場合には、知事は命令を通じて、30日以内に補欠選挙を組織する(同改正案第31条第3項)。ただし、知事のそのような命令に対して、行政裁判所に訴訟を起こすことができる(同改正案第31条第4項)。
加えて、基礎自治体議会の決定が、行政裁判所から半年の間に3度以上の取り消し命令を受けた場合、同議会は解散されうる(同改正案第57条第1項)。地方議会の解散は、行政裁判所の最終決定に基づき、知事の提案にしたがって、政府決定を通じて行われる(同改正案第57条第2項)。また、首長ないし書記から議会の解散について報告があった場合、知事はそれら議会の解散について命令を出し、新選挙の組織を政府に提案する(同改正案第58条第2項)。ただし、地方議会の議員は解散決定に関して、行政裁判所に提訴でき、その場合解散は一時的に停止される(同改正案第57条第3項及び第58条第3項)。しかし、裁判所がこの提訴を棄却した場合には、知事の提案を基に、新たな選挙日程が政府によって定められる。
基礎自治体議会の活動に関しては法律を通して自治が保障されているが、議会の暴走に歯止めをかけるための手続きも用意されている。県知事がそれらの地方議会の決定を違法と判断した場合は既に指摘した通りであるが、その他にも議会の書記が議会の決定を違法と判断した場合、あるいは議会の決定が権限を逸脱していると判断した場合、同書記は決定への署名を拒否し、首長及び県知事に議会の決定を報告することになっている(同改正案第49条第1項及び第2項)。
また、知事は、基礎自治体議会議員が刑事裁判にかけられたとき、あるいは刑事裁判が開始された段階で、最終的な判決が下されるまで、同議員の議員資格を一時停止する(同改正案第59条第1項)。
エ 基礎自治体の首長と知事及び国家
基礎自治体であるコミューンや町の自治が保障され、知事の活動が基礎自治体の出す条例等の合法性の監視に限定されており、しかも両者の間には従属関係はないとされることから、基礎自治体の首長と知事の間には、それ以上の関係は概して存在しない。ただ、例外的に、首長の任期停止、任期の終了、解任及び首長のやり直し選挙などに関して、知事に以下のような役割が課されている。
首長選挙の正当性の審査は、その地域の裁判所が行うが、その結果不正が認められた場合には、知事の提案に基づいて、政府が新たな選挙の日程を確定する(地行法改正案第64条第4項)。