自治体はこれまでのように自分で事業を遂行することは困難になり、サービス部門は民間やトラストにまかせ、政策決定・意志決定と事業後の監査(インスペクション)だけを行うことになる。いわゆる「エージェンシー制度」の流れとも呼応するものである。
第四の特徴は、グラウンドワーク・トラストは基礎的環境のケアや環境教育、ランドスケープ・デザイナー、ソーシャルワーカーなどの常勤の専門家集団を擁していることである。いわば、地域環境の総合コンサルタント業務と、従来は行政が行っていた環境改善事業を実施する事業会社の機能とを合わせ持った第三セクター会社のようなものである。
実際、英国で展開されている事業の内容は、公園緑地などの環境整備から始まって、「グリーンIT」と呼ばれる高度情報化技術を環境改善に生かす国のプログラムの実施、地域のサイクリングロードの整備、地域の企業や自治体の「ISO14000」の取得支援などの事業を幅広く展開している。
エ グラウンドワーク・トラストの設立される場所
グラウンドワークはサッチャー政権下で導入された施策であるが、その後1997年までに英国内に42社のトラストが設立された。
英国におけるグラウンドワーク・トラストは、「(環境や社会に)問題のある地域」に限って設立されるというのが大原則であった。ボランタリーなチャリティ団体のNPOであるとはいえ、国の税金を投入するからには、国のスタッフが国家的見地から特別に手当をする必要のある地域であるかどうかについて、厳しく査定した上で設立されたのである。
しかし、この十数年間の成果(環境改善と行財政改革への貢献)が高く評価され、とりわけブレアの労働党新政権に替わった後も、問題のある特定地域だけでなく、広く一般的な地域での課題解決の手法として位置付けられ、より一層の政策としての促進が見込まれている。