(6) グラウンドワーク
環境問題への対応を行う代表的なNPOとして、グラウンドワーク・トラストがある。
ア グラウンドワークの背景
グラウンドワークは、1980年代から英国において展開されている運動であるが、その背景には戦後長らく続いた労働党からサッチャー保守党への政権交代と「英国病」と呼ばれた厳しい英国のリセッションがある。
戦後の英国では「ゆりかごから墓場まで」と言われた手厚い福祉政策が続いたが、1960〜1970年代にかけて国内外での産業構造の転換などのため英国は厳しいリセッションの時代を迎え、高水準の福祉政策の続行が困難となった。
重厚長大型(主として石炭や鉄鋼、自動車などの製造業など)の企業の倒産等により失業率が上昇し、同時に税収も落ち込み、若年・外国人労働者の失業者による都市暴動が頻発するなど、行政主導による社会の秩序維持にも困難が生じた時期である。
同時に、失業者など社会的弱者への手厚い保護政策の継続が、かえって社会的弱者の固定化を生み、高い税金にあえぐ一般勤労者のモラル・ハザードも生じていたと言われる。
こうした状況を打破して、民間主導による健全な経済・社会の再活性化を目指すのがサッチャー政権下で断行された各種の改革である。今日のわが国でも議論されている金融ビッグバンをはじめ、都市開発の分野ではエンタープライズ・ゾーンによる規制緩和、都市開発公社による民間セクター主導の都市開発などが次々に打ち出された。そして、環境改善の分野でも民間の力とノウハウを導入するために創設された新しい手法が「グラウンドワーク」である。