(4) 広域処分場の立地問題などと地方分権
ア ダイオキシン問題
温暖化防止とは直接関連しないが、現在、各地でゴミ焼却に伴うダイオキシン等の有毒廃棄物が問題となっている。ただ、廃棄物の処分、リサイクルは、広い意味で省エネ省資源に結び付くもので、一概に温暖化と関係ないとは言い切れない問題である。
現在、生活ゴミの処分、産業廃棄物処分、産業用原料としての廃資材の流通などが、住民、行政(国、都道府県、市町村)、各々の議会などとの関わりのなかで複雑な問題を引き起こしている。
典型的なものとして、関東地方のS県におけるダイオキシンの問題をとりあげる。
東京都に隣接するT市に多くの産業廃棄物処理業者が立地しており、ダイオキシン濃度が高いとするいくつかの調査結果が公表されている。特にマスコミが取り上げた特定の測定値はかなり高いものであった。ただし、公表された数値は平均値では現在の国の環境基準の数値を下回り、公式には問題ないとされる水準のものである。
しかし、マスコミ報道後、全国チェーンの大手スーパーなどを中心に、全国でT市産の農作物の仕入れを控える業者が続出し、地元の農業従事者は大きな影響を受けている。
ダイオキシン排出源のひとつと見られるのは、この地に多数立地する産業廃棄物処理施設であるが、こうした施設の立地のコントロールは基本的にS県の手でなされる。しかも、国の法律に従って所定の条件を満たす業者については、基本的にその営業を阻止することはできず、地方自治体としては法的根拠のない「行政指導」で対応するしかないのが現状である。
一方、T市においては、影響を受けた農業従事者を中心に、市議や市役所に対応を求める声が多く出されているが、産業廃棄物業者の立地問題は県の施策、法律の問題は国の施策になるため、一自治体で直接的な対応はしにくくなっている。