イ エコシティの理念
環境共生型の都市づくり、というエコシティの理念は、「田園都市」や「コンパクト・シティ」など歴史的に様々な形で提唱されて来た理想都市の理念の流れの一つであるが、今日的な課題として地球環境問題への対応に主眼点を置いている。
(ア) 環境問題と都市づくりとの接点
都市づくりの分野と地球環境問題との接点は、「環境への負荷の軽減」と「自然との共生」の2点に集約できるが、広義にはゆとりある都市空間や美しい都市景観の整備、過密や無秩序な開発などの地域や都市の課題とも密接に関係している。
例えば、都市のエネルギーの集中的な消費は、地球温暖化を加速するのと同時に、ヒートアイランド現象によって都市の快適性を損なう。また、都市の緑や水辺は美しい都市景観形成のための重要な要素であるのと同時に、都市の気温上昇を緩和したり、多様な動植物のすみかになるといった環境面の機能を果たすことも期待できる。
これらは、いわば自然が本来持っている環境機能を、都市の中に積極的に導入して、都市環境の快適さの向上にも役立てるという考え方である。人工的、化学的製品よりも自然やバイオを売り物にした商品が売れるという世相も反映していと見られる。
人口密度や都市活動密度は、低いほうが環境へのインパクトは少ないはずであるが、廃棄物やエネルギーのリサイクル、エネルギー効率の良い公共輸送機関の採算の面からは、むしろある程度人口密度の高い都市の方が有利な側面もある。
人口あたりのガソリン消費量と都市密度とを比較すると、米国のヒューストンやフェニックスといった自動車を前提とする広大な都市は単位エネルギー消費が極めて大きく、逆に香港や東京といった高密度で公共交通の発達した都市では少ない。それでもヒューストンに比べて東京が極端に不便ということはなく、都市の作り方によっては都市の利便性、活力、魅力といったものと省エネルギーとは両立し得ると考えられる。