ウ わが国における導入の可能性と課題
(ア) ESCO導入の可能性と効果
上述のESCOの特徴から、その導入の省エネルギーから見た効果として以下のものが考えられる。
・これまで投資回収年数が長い、あるいは資金不足という理由で行われてこなかった省エネルギー需要を掘り起こすことができる。
・従来わが国の省エネルギーは、産業部門(特に大規模工場)において企業内部の人材(エンジニア)に主導される形で行われてきた。
ESCOの導入は、これまでそうした人材を持たないために行われてこなかった、業務部門、公共部門、産業部門(中小企業)における省エネを推進する。特に近年エネルギー消費の伸びの著しい業務部門に対して有効である。
わが国におけるESCO導入の効果は、業務部門では対象とするビル等の規模を1万m2以上とし1]省エネルギー率を25%、2]単純回収年数を7年とすると、省エネルギー量は原油換算で、年間184万kl、潜在的工事投資規模は2兆475億円となる。産業部門の場合、既にかなりの省エネルギーが達成されていること、短期の投資回収が一般的であることから1]省エネルギー率10%、2]単純回収年数を4年とすると、省エネルギー量は原油換算で、年間220万kl、潜在的工事投資規模は4,240億円となる。
以上、業務部門・産業部門を合計するとわが国におけるESCO事業の規模は、
・原油換算省エネルギー量:404万kl/年
・潜在的工事投資規模 :2兆4,715億円
と見込まれる。
(イ) ESCO導入に当たっての課題
わが国におけるESCO事業はその創業期にあり、今後整備すべき項目は多岐にわたる。