英国ではサッチャー政権下で公益事業の規制緩和が推進され、市場の自由化が図られた。このことは一方でDSM等への動機付けを失い、省エネルギー推進に悪影響を与えると言った批判もあった。しかし、自由競争は一方でエネルギーサービスに対する考え方を大きく転換することにもなった。つまり、競争市場においては、顧客にとって有利な商品が受け入れられることが浸透し始めた点である。
英国におけるESCOの市場規模は、1995年で1億5千5百ポンドであり、現在急激な成長を遂げている。潜在的な市場規模は15億ポンドと考えられている。
東欧諸国におけるESCO事業は急速な成長を遂げつつある。Europe Bank for Reconstruction and Developement(EBRD;ヨーロッパ開発銀行)は東欧でのESCO設立を支援している。東欧は省エネルギーの可能性が極めて高いにも関わらず、一方で経済状態が悪いために投資に対する財力が不足しているのがその理由とされる。先進国のようにある程度省エネルギーの進んだ地域と異なることから、ESCOの契約なども大きく異なっているようである。
東欧のほとんどの年には地域熱供給が整備されている。これまで社会主義体制下にあって、エネルギー価格がほとんどただ同然であったため、地域熱供給におけるエネルギーのロスはきわめて大きい。例えば、地域配管の断熱が不十分なため、雪が積もった状態でも、配管の上は雪が解け緑になっていたり、室内では温度制御ができないため、外気がマイナス20度でも、窓を開けて会議が行われることがあるという。
1990年から始まった東欧の改革以降、最近6〜7年はエネルギー価格が高騰し、所得に対する光熱費支出割合が上昇するなど、需要家にとってエネルギーは大きな問題になっている。
一方で、東欧は未だ経済情勢が安定しないことから、ここ10年間設備改修や更新に投資する資金が確保できない状態にある。EBRDがESCO事業を積極的に東欧で推進しようとする大きな理由は1]エネルギーコストが上昇している、2]浪費が多い、3]資金調達ができないと行った東欧の特殊事情が、ESCO事業推進に適していると判断したことによる。