日本財団 図書館


第1章 土地利用・交通分野でのCO2削減策

 

調査研究委員会 委員

鹿島 茂

 

1 交通問題とCO2削減

交通分野には、本稿で検討するエネルギー消費に伴うCO2発生量を削減するという課題が発生する以前から、交通事故、混雑、騒音・振動、NOxやSPM等による局地的な大気汚染等、多くの課題が存在している。

これらの課題は相互に関連し、1つの課題解消が他の課題解決にも効果があるという場合が多い。そして、それぞれの課題解決のため、既に多くの対策が交通に関連する複数の機関によって実施されてきているが、それでも、その成果は、現状では必ずしも合格点が貰えるものではない。

では将来、関係機関がどのような対策を実施していけば、これらの課題が解決できるのであろうか。この問に答えようとするのが、本稿の目的である。そして、この問を考えるのに大変参考となる有用な研究成果が、OECDから公表されている。(1)これは、OECDが2015年を目標年とし、この年までに上記の課題を解決に向かわせるには、どのような対策が必要かを検討したものである。

研究では、対策の実施レベルを大きく3つに分けて検討している。第1の対策レベルは、現在最も対策が進んでいると言われている国、地域で、実際に採用されている対策を、全ての国、地域で実施するというものである。第2の対策レベルは、第1の対策レベルに加え、都心の再集中、都市域のコンパクト化、既存の交通施設を有効活用するための土地利用規制、広い地域での交通静穏化策の実施、ITS等の新技術を用いた道路交通需要の管理、低公害自動車等の助成策や規制による本格的普及等、現在では革新的と言われている諸対策を実施するというものである。第3の対策レベルは、第2の対策レベルに加え、さらに自動車利用者が発生させている社会的費用を燃料税等を用いて、全て利用者に負担してもらうという対策を実施するというものである。

検討結果は、交通事故は、現状の対策でもやや減少、第1の対策レベルで大きく減少、混雑は、現状の対策では増加するが、第1の対策レベルで減少、騒音・振動は、現状の対策では増加するが、第2の対策レベルで減少、局地的な大気汚染は、現状の対策でも減少というものである。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION