日本財団 図書館


(イ) 在宅だけでの限界(グループホームなどの集合住宅などの必要性)

今は、在宅介護の検討が盛んであるが、在宅だけでの限界についても考えておく必要がある。例えば、1日に6、7回のおむつ交換が必要な人が多数いる在宅というのは効率が悪いので、そのために病院や老人ホームの施設が必要なのである。在宅指向も良い点はあるが、ある程度の集合住宅的な施設の整備も必要であろう。

 

(ウ) 財源が2つに分かれていること(痴呆ケアとリハビリの問題)

介護保険制度では、治ること、普通に生活することといった部分を対象としては機能しないために、痴呆ケアとリハビリが医療と介護の狭間に落ち込んでしまっている。この健康づくりのインセンティブが働かないという問題は、短絡的すぎるかもしれないが財源が2つに分かれているからであり、次の課題として出てくることが予想される。

 

(エ) 理想的なターミナルケアの模索

高齢者の間ではぽっくり死にたいというニーズは非常に高いと思われる。議論しにくい事柄ではあるが、スウェーデンでは、いかに安らかに死ぬことができるかといった議論をきちんと研究している。図表2-18は、痴呆老人ケアのグループホームの例であるが、グループホームと在宅、デイケアを適切に組み合わせると、最後に寝たきりになって病院にいる年数が短くなることが判明している。このように、わが国でも痴呆の状態で10年、15年生きるというよりは、痴呆の状態になったときに、余り悪くならないうちに幸せに死ぬことができる手法というものを議論する時期を迎えていると思われる。

図表2-19がこれを表したものであり、ナーシングホームや病院のような施設ではADL(Ability of Daily Life:日常生活動作)が徐々に低下するが、グループホームのような十分にケアを行えるところであれば、ADLが若干上がって、死亡する時期が短くなるという報告もされているのである。

このように、できるだけADLを下げない状態で、要介護になった時の人生の長さよりも質を考える理想のターミナルケアというものを、介護問題とは別に議論する必要があると思われる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION