2 新たな分野(介護保険導入に向けた体制整備)
(1) はじめに(在宅サービスについて)
ア 脱施設・ノーマライゼーションの実現 ―スウェーデン―
在宅介護については北欧地域の福祉が世界的にも有名であるが、まずは、スウェーデンにおける在宅介護に関するこれまでの動きを見てみる。
スウェーデンには1982年にできた「社会サービス法」という法律があり、「必要なサービスを必要な人に提供することは市町村の最終責任である」とされている。必要なサービスというのは、子供に対しても、お年寄りに対しても、障害者に対しても、どんな人に対しても必要なだけ提供するということであり、これがある意味でノーマライゼーションの法律と呼ばれているわけである。
ホームヘルプがスウェーデンで始まったのは、1950年頃、高齢化率が10%の頃である。老人ホームが雑居部屋であるとか、人里離れたところにあるということで社会的に強い批判を浴びていた。このため、脱施設として1950年代中盤に、地域のボランティア、特に赤十字がサービスを家に届けようとしたことからホームヘルプは始まったものである。
高齢化率が上がってくるとボランティアだけではニーズに対応できなくなり、在宅介護に市町村が本格的に乗り出してきたのが高齢化率13%の頃である。高齢化率で合わせてみると日本も似たような経過をたどっている。
ホームヘルプは家事援助を中心にして広がったが、「社会サービス法」ができた1982年は高齢化率も16%になっており、家事援助だけでなく身体介護が必要になってきた。そのためには、1日に5回、6回訪問して、おむつ交換や食事の介助などを行う必要があるため、今度は24時間対応で巡回型というホームヘルプが出てきたのである。更に、近年ではホームヘルパーに医療教育を施して、在宅で簡単な医療も行えるようにしていこうという段階まできている。
スウェーデンにおいて脱施設のシンボルで始まったホームヘルプは、この40年の間に、家事援助中心から身体介護が加わって、初期医療の知識を持ったホームヘルパーが必要とされるまでに変わってきているのである。