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船舶の中で運航に従事する運航者の役割の範囲を図にすると、図3のようになる。このことから、運航者の役割を明確にするには、船舶航行システムにおける運航組織の役割、運航組織における船内組織の役割、船内作業での運航者と装置の役割、共同作業時の各自の役割につきはっきりさせる必要がある。これにより、それぞれの作業の成果を具体的に評価することが可能となり、また不都合が生じた場合にはその原因を特定することが容易となる。

一方、最近の情報関連技術の進歩はすさまじく、これにより船舶運航における船舶と陸上の間の情報の垣根はますます低くなり、陸上側においても船舶内部の情報を入手することが可能となりつつある。このことは通信情報技術の進歩が安全運航における会社の責任を今までとは次元の異なる、高いレベルにすることを意味し、会社が自社船をきめ細かく管理することを社会が要求するようになることを予想させる。このため会社は通信情報技術の進歩にともない、その都度、運航管理体系を再検討する必要がある。

 

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図2 船舶航行のプロセス

 

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図3 船舶航行システムにおける運航者の役割

 

2. 船員教育のあり方

 

船員教育のプロセスを技術習得のプロセスと捉えて図にすると、図4となる。このように、先ず知識を習得し、次に基本的技術を習得し、最後に総合的技術を習得する。これを座学と実習により実践しているが、一人の有能な運航者を養成するために船舶を使った実習に多くの時間をかけているが、これを効率よく行うためにシミュレータが導入され、その比率も徐々に高くなっている。

運航者と装置から構成される船内運航組織の機能が十分なものであるかどうかは、次の3つの項目により評価される。

1]航行の安全を担保する機能が、当直体制と航海機器とで構成されたシステムに備わっていること。

2]当直の間、1]の機能が維持されること。

3]航行中に1]の機能が低下したときに、それを検出することができ、機能の回復や代替えなどの手段を講じることができること。

こうした3項目の評価を行い、その結果、全ての項目を達成できた場合に、その運航者に資格を与えることになる。しかし船舶の場合、船舶の種類や搭載機器の組み合わせには数多くの組み合わせがあり、船員資格としてその全てを網羅することは困難であることから、現在の甲板部の船員資格は船の大きさで分類した資格としている。しかし運航者の従事する運航作業形態から見ると、船員資格は大きさ別と言うより、運航形態別(あるいは運航装置別)に分類することが望ましいと言える。

 

 

 

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