日本財団 図書館


V. 船舶運航管理と船員教育

 

東京商船大学

今津隼馬

 

1. 船舶安全運航管理のあり方

 

船舶航行システムとは、船舶を安全に効率よく航行させる目的で構築されるシステムで、図1に示す通り、「運航者」「自船」「航行環境」の3つの要素から構成されるシステムである。当然、それぞれの要素はシステムの中で機能を分担しており、「運航者」は遭遇する航行環境に自船を適応させながら、自船を目的地まで安全にしかも効率良く到達させる役割を担っている。昔はこの任務遂行に必要な機能の全てを船舶内部に持っていたが、通信技術の進歩により、これを陸上と分担するようになった。

現在の運航組織は船内組織と船外(陸上)組織からなり、船内組織は「運航要員」と「運航設備・備品」により、陸上組織は「機能維持」と「航行支援・環境整備」により構成されている。船内組織の中の運航要員は、甲板部門と機関部門に分かれており、甲板部門では自船の航行フェイズにより、それぞれの運航業務における分担を表1のように決めている。

 

012-1.gif

図1 船舶航行システム

 

表1 運航フェイズ毎の各自の役割

012-2.gif

 

遭遇する環境に応じて自船のとるべき行動を決め、これを実行するプロセスは図2で表すことができる。このプロセスにおける問題点をヒヤリハット事例調査から抽出した結果、運航者と装置や機器の関係、共同作業における共同者との関係等に少し問題のあることが判明した。この内、機器と運航者の関係については今まで運航者に全ての責任があるとされてきたが、最近の製造物責任(product liability)の考え方などから、今後は機器と運航者の各作業における関係を明確に位置づけることが必要となり、その結果、会社の側にも責任を伴うことが予想される。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION