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II. NKとしてのISMコードに対する基本的立場と実施を控えての準備状況

 

(財)日本海事協会

坂本優

 

ISM Codeは、近年海難事故が頻発したことを契機として、安全運航と海洋環境の保護を目的として、1993年に国際安全管理コードとして採択され、1994年5月にSOLAS条約第9条に強制要件としてに導入された。本要件は船級要件として規則化され、日本国政府から認可を受けた。本会は「みなし」検査として日本籍船及び会社の審査に携わっている。また、38の船籍国政府からIMO Res.739(18)に基づく認定機関として、ISMコード審査に関わる代行権限を得ている。

ISM審査に取り組む本会の姿勢は、世界をカバーする検査ネットワークと資格ある審査員により会社・船舶の安全管理システムを公平不偏な立場で審査を行い、ISM Codeの目的を具体化していくことである。安全運航と環境保全に関する新しい管理システムであるISMコードをそれぞれの会社の業務形態にもっとも適した状態で導入することを支援し、新しいシステムの運用を継続する中で、不具合を発見し、是正するにより、安全管理技術の継続的な改善を図っていくことを支援することも重要な目的であると考えている。

本会は、ISM業務の開始にあたり、1992年に船舶管理システム基準検討委員会を発足させ、船舶の運行と安全管理に関する調査を開始し、1993年6月には、当時の船舶管理に関するIMOの討議内容を反映させた「船舶管理システム審査登録規則」を制定した。1994年9月、ISM CodeがSOLAS要件として採択されたことを受け「国際安全管理コードによる安全管理システム審査登録規則」を制定、ISM審査の基礎要件を整えた。 また、これと並行して、審査員の資格について「審査員選任規則」を定めるとともに、審査員の養成のための「研修手順書」を策定した。この研修は5段階の座学研修と資格試験からなり、これに合格した者に対して、さらに実地研修として会社審査および船舶審査をあわせて4回受けた者に主任審査員としての資格が与えられる。この制度の下、平成10年5月現在、166名の主任審査員が登録されている。

また、本会は、安全管理システムの審査にあたり、国内、海外の主要な都市において、30回をこえる大小の説明会をもち、また個別のご相談にも応じてきた。このようにして本会が本年5月末までに審査登録を行った会社は329位、船舶においては1799隻に及んでいる。

ISM審査登録制度はその緒について間が無く、未だ未熟な点も多く実効あるシステムとしてすべての関係者の間に定着するにはまだまだ改善の余地があると考えるが、それぞれの会社が適合証書の取得は安全運航達成のための第一歩であり、安全管理への自主的な継続的な取り組みがあって初めて真の目的に達成することが出来ることを認識する必要がある。

船舶管理会社、船籍国政府、PSCそして本会が一体となった活動が、人命の損失あるいは海洋汚染等の重大海難の原因の80%を占めるというヒューマンエラーの防止の一助となることを強く願うものである。

以上

 

 

 

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