日本財団 図書館


4. 得られた成果

本研究は高度モニタリングを実現する上での必要な要素技術の確立とこれらによって構成される新しいモニタリングのコンセプトを提案することに研究主題がある。以下に本研究で得られた成果をとりまとめ示す。

1. 船体の「高度モニタリングシステム」のコンセプト・仕様(SR233 AMS)の提案ができた。

基本機能を下記としている。波浪/性能/構造を総合的にモニターする提案は初めてである。

・波浪中の船舶の船体状態を波浪/性能/構造応答に亘り総合的にモニターする。

・モニター頻度を密としデータ収録・解析は船上パソコンで自動的に行う。

・モニターは船上と同時に陸のコントロールセンターでも見ることができる。

・モニターデータは保管・解析された運航計画/荒天時航海支援/保守支援に反映する。

 

2. 高度モニタリングを構成する基礎技術を構築した。

基礎技術として波浪/性能/構造の分野に亘りセンシング/データ処理/データ通信/データ解析等の新しい技術を得た。以下にポイントを記す。

 

2.1 船舶の波浪計化による波浪モニター法の実用化の目処を得た。

・波浪中での船体運動及び相対波高データを解析して波浪を特定する方法〔船体波浪計化法〕を取り上げ3つの解析法(MLM法、Bayes法、Paremetric法)の特徴を明らかにした。

・解析時間の短いMLM法を主にし船上で解析できる波浪モニターを考案した。精度を考えると船首/左右舷の3箇所で相対波高計測を行うのがもっとも望ましいが、船体運動の大きい領域では船体3運動だけでもモニターしうる簡易法(SR233 Simple Wave Monitor)も使える目処を得た。

 

2.2 実海域性能データの自動計測・解析システムを開発した。

・船上で実海域性能データを自動的に収録処理するシステム(船上1次解析)とさらにこれらのデータから波・風・潮流等の影響を解析するシステム(陸上2次解析)を一貫したものとして開発した。

・従来のアブログ情報からの推定・評価に比べればデータの同時性から各種データの相関が明確となり1日のデータも分・時間刻みで多量に解析できるので推定に対する精度が著しく向上する。

 

2.3 構造応答の新しいセンシング手段の開発及び船舶への適用の目処を得た。

・オフラインで構造の疲労被害レベルをセンシングする手段として犠牲試験片の開発を行った。実構造との疲労強度の相関を明らかにするとともに高感度型も開発した。

・オンラインであるが構造の多点歪同時計測法として光ファイバーによるブラグ格子センサー法が船舶に向いている方法であることを明らかにした。

・現在実船計測等で使用されている電気式の歪ゲージによるセンシングに比べ、これらはいずれも耐久性/防爆性に優れる。犠牲試験片は安価で容易に取り付けられる利点も有する。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION