(3) 救助艇兼用のシステム
救助艇の要件は海上人命安全条約に規定され、既に救命艇と救助艇の兼用は既存のシステムで実施されている。しかしながら、自由降下式救命艇を救助艇と兼用としたシステムはなく、自由降下式救命艇を救助艇と兼用するためには、被救助者の横臥場所の確保方法・被救助者の搬出方法・迅速な艇の回収方法の検討が必要である。
横臥場所の確保方法・被救助者の搬出方法については実船対応で可能であり、迅速な艇の回収方法に就いては前述の回収システムでシステムも構築は可能であると考えられる。
4. 得られた成果
4.1 設計・解析手法
(1) 艇体運動計算法
数値シミュレーションによって、着水運動や衝撃加速度への船型や落下条件の影響を定量的に評価することが可能となった。船型や落下条件を考慮して空中から水中までの自由落下式救命艇の挙動を理論的に求める手法は国際的にも無く貴重である。その計算精度を詳細に検証できたことは本研究の成果の一つである。
自由落下式救命艇は、落下条件(滑台傾斜角、滑台上の滑降距離、ガイドレール長さ、落下高さ等)を適切に設定しないと、極めて危険な着水運動や衝撃加速度が発生する可能性がある。このような危険性を排除するために初期設計時に数値シミュレーションを実施して安全性を確保することは非常に有効なことと考える。また、重量分布や船型等の影響を考慮可能な数値シミュレーション法によれば、最適な落下条件、最適な船型等を選択することも可能である。さらに、二段滑台方式のような新しいシステムを考案する際の性能確認計算も可能である。これらの目的に対し本研究で検証した数値シミュレーション法が極めて有効であることが分かった。
(2) 艇体の衝撃荷重計算法
自由降下式救命艇の衝撃荷重の推定法について検討した。推定結果と大型模型艇の実験結 果とを比較し、衝撃圧分布並びに最大値とも良く対応することが確認された。実験値は艇の弾性変形による影響から、定量的な一致度は余り良くないが、設計荷重の推定には、簡便な推定方法であると言える。
この推定法により、構造解析で与える荷重分布を求めてFEM構造解析を行った。
(3) 艇体の構造解析法
FRP製救命艇のFEM構造解析例は非常に少ない。複雑な3次元形状であるために、モデル化に多大な時間と労力を費やしたがFEM構造解析が可能となった。今後、荷重の推定精度と併せて構造解析法の確立を図る必要がある。