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4.フェリー事業はどこへ向かっているのか

○今、われわれが迎えている時代

行政改革会議の最終報告(平成9年12月3日)では、日本の近代を以下のように分析している。

『わが国は、近代史上、大きな転換期を三度経験している。一度目は、19世紀後半、黒船の来訪を端に発した幕末、維新期である。次なる転換期は、1920年代であって、わが国は戦争への坂道を転げ落ちていく。そして三つ目が敗戦であり、米軍の進駐の下、瓦礫の山を前にして、われわれは深刻な挫折感に打ちのめされながらも、復興と国際社会への復帰への道を歩み始めた。』

 

次に、「最終報告」は、現代の日本社会について以下のような問題提起を行っている。

『深刻な挫折に端を発しつつも、近代史上、明治維新に次いで、日本民族のエネルギーが白熱し、眩いばかりの光彩を放ったこの半世紀は、経済的繁栄というかけがえのない資産をもたらしたが、(そういう時代は、)われわれにとって過ぎ去りし時代になろうとしている。右肩上がりの経済成長が終焉し、社会の成熟化に伴い、国民の価値観が多様化する中で、かつて国民の勤労意欲を喚起し、社会に活力をもたらした同じシステムが、現在ではむしろ、もたれあいの構造を助長し、社会の閉塞感を強め、国民の創造意欲やチャレンジ精神を阻害する要因となりつつあるのではないか。』

 

○フェリー事業の進むべき道

「規制緩和は恐るべきか?」

「フェリー事業は免許事業である。免許事業とは国家に保護されているものである。」といわれることがある。そして、規制緩和により、その「保護」がはずされ、無秩序な競争が起こることを懸念する人は声は大きく、業界では、今までのルールに変わる新しいルールが必要であるという声が聞かれることもある。

そこで、今一度、今までのルールというものを改めて考えてみたい。

確かにフェリー事業への参入には需給調整規制があり、一種の「保護」を受けているということができるかもしれない。そして、フェリー事業が「保護」されている(といわれている)間、他の輸送モードは着々と発達してきた。道路の整備は着々と進められ、鉄道、航空輸送とも熾烈な競争関係にある。「保護」とは、「事業経営の安定の確保」のことである。現在のフェリー事業は道路等の他の輸送モードからは何ら保護されておらず、本当に、現在、「安定的な経営を確保」されている状況といえるか疑問なしとしない。

一方で、今回の規制緩和は、今まで築かれてきた業者間の信頼感を否定するものではない。

 

 

 

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