5)利用者に対する情報公開
規制緩和により中・長距離フェリーにさまざまな事業形態が導入されると、利用者の選択肢は増加し、自らのニーズにもっとも適合する輸送方法を選ぶことができる。しかし、そのためには輸送サービスの提供者が利用者に対し適切なかたちと内容の情報を提示しなければならない。情報公開について運輸政策審議会の答申は以下のように述べている。
<答申の内容>
市場原理の下で利用者が自己責任に基づく、自由な選択を行うことを可能とするためには運賃や運航スケジュール等のサービス内容や安全性等に関する情報が、比較的可能でわかりやすい形で、利用者にあまねく提供されていることが必要であり、国内旅客船事業者は、このような情報を利用者に対して積極的に提供するよう努めるべきである。また、行政は、事業者による正確・公正な情報の提供を促すとともに、安全に関する情報等専門的知識が必要とされる情報や事業者が自ら積極的に提供することを期待し難い自己に不利な情報等については、客観的立場から、利用者にわかりやすく提供することが適切である。
また、情報の提供にあたっては、利用者からの情報へのアクセスが容易となるよう配慮すべきである。
なお、情報の提供にあわせて、利用者の意見・苦情等が事業者にフィードバックされ、事業の改善等に反映される仕組みを検討することが重要である。
現在、「海の時刻表」が発行され、フェリー利用者の情報提供メディアとして活用されているが、規制緩和後は、他の輸送手段とのサービス内容の比較といったより高度な内容の情報提供が必要になると考えられる。
6)行政等の支援
規制緩和は、フェリー船社にとって「自己責任の下で、自由な発想に基づく事業展開が可能になる。」と解釈できよう。しかし、多くのフェリー船社は「自社だけの力では何をするにも、限界を感じる」と述べている。「運賃の低廉化を促進し、競争力を高めようとしても、コスト削減はこれ以上は困難だ」という声も多い。「利用者のニーズに合ったサービスを提供したいのはやまやまだが、それに伴うコストを負担できない」「モーダルシフトを促進したいが、自社の努力だけではどうにも進まない」といった発言に続いて「フェリー事業者のコスト削減努力や利用者サービスの向上努力を行政は支援してほしい 」という声があがっている。
気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)における京都議定書の採択など、地球環境問題が国際的な喫緊かつ現実的な課題となっており、これに対応するためには、物流シス