6]四国(中距離)航路
四国航路のうち、徳島及び香川航路は運航距離が短いことと本四架橋と競合していることが考慮すべき点である。したがって、小さくなりつつある需要の中をさらに区分して、旅客あるいは貨物に特化する方向は望ましくないため従来型または低コスト型の旅客フェリーが適合すると考えられる。ただし、徳島航路については、所要時間とコストの点で本四架橋と対抗するため、「超高速マイカーフェリー」の導入可能性はある。しかし、超高速による追加運賃を設定すると利用は見込みにくいと考えられる。
4)コストの削減
フェリー事業の運賃については、現行制度では、コストを所与のものとして、コストに適正利潤を加えたものを運賃の基礎としていたものを、今後は、収入が市場原理によって定められるため、収入マイナスコスト=収益の計算式に基づいて、コスト如何に関わらず、市場原理に基づいて、収入を最大にするように運賃を設定する必要があることとなる。つまり、「はじめにコストありき」の考え方から「はじめに収入ありき」の考え方と変わっていき、収入以下のコストでやっていける者のみが生き残る世界となっていくこととなる。
むろん、以上述べたことは、コストの考え方の変化をモデル的に述べたものであって、実際はかなりの程度「競争」に基づく市場原理に基づいて運賃が設定されていることから、ドラスティックに状況が変化することはないものと考えられる。
こうしたことを考えると、フェリー業界としても、いかにしてコストを削減するかが重大な問題になってくるが、フェリー事業者は、主なコストとしては、船舶の建造費、燃料費、人件費があげられ、この他にも港湾の施設使用料等も無視することができないものと考える。このうち、船舶の建造費、燃料費については必然的に市場価格で決まり、固定費としての性質も有し、個別の事業者の努力によって削減することは難しいものと考える。
フェリー事業における人件費について考えてみるに、出来る限り省力化を図り、その削減を推し進めていくことは引き続き必要になってくるものと考えられるが、個別の賃金についても再検討を迫られる可能性がある。現在、一般的に、フェリー事業に就労する職員のうち、陸上職員の労働条件については企業別組合との間で個別に定まるのに対し、海上職員の労働条件については、産業別組合との間で統一的に定まっている。今回の規制緩和により、フェリー事業の運賃収入が全くの市場原理に委ねられ、運賃収入について航路間格差、企業間格差が現在以上に広がった場合、特に海上職員について現在の統一的な賃金体系が確保できない可能性がある。