「自動車航送貨物定期航路事業」という事業区分は、昭和40年の海上運送法一部改正により導入された。その背景には、昭和38年頃、自動車航送を行う航路の数が急増し、輸送台数は毎月平均22万台(バス・乗用車6万台、トラック5万台、2輪車・3輪車11万台)にも達したことがある。その多くは旅客定期航路事業者が行っていたが、旅客定期航路事業については、旅客の運送面についてのみ規制を加えており、自動車とその運転者、乗客、積荷を一体として運送する面からの的確な規制がなかったので、旅客定期航路事業者が行う自動車航送について、旅客の運送の場合と同様の規制を行うこととした。
また、自動車航送をする貨物定期航路事業は、内航海運業法による登録事業となっており、(内航海運業法は、昭和41年の改正により登録制から許可制へ移行)その増加が著しく、これを放置していたのでは自動車航送に関する秩序の維持とその健全な発達を図る上で好ましくないので、貨物定期航路事業のうち自動車航送を行うものを自動車航送貨物定期航路事業とし、当該事業を営むには運輸大臣の許可を受けなければならないなど必要な規制を加えることとした。
貨物フェリーは、当初小型船により短距離の運航をするものが主体であったが、その後船型の大型化、輸送距離の長距離化が進んだ。その結果、貨物フェリー事業及び内航RoRo船事業について、積荷形態や輸送形態等提供するサービスの内容が類似することとなった。しかしながらRoRo船事業が、船腹調整事業によりスクラップ・アンド・ビルドが必要であるのに対し、貨物フェリー事業は、需給審査のうえで許可を受けるとスクラップなしで船舶の建造ができるなど、競争条件に相違があるといった状況にあったため、運輸省は、昭和58年通達(注3)により特に競合関係が見られる長距離航路(概ね300キロメートル以上の航路)において、貨物フェリーと内航RoRo船との間で調整を図る措置を講じることとした。
(注3)昭和58年通達の概要
1]新規貨物フェリー事業の許可は行わないこととし、新規事業参入は、旅客フェリー又は内航RoRo船のいずれかの形態とする。
2]旅客フェリー事業に係る免許又は認可に当たっては、実質的に貨物フェリー事業となるような事業計画を認めないこととし、旅客定員については、車両積載台数に相当する定員を有し、しかも、当該定員に見合う旅客サービスを実施するための要員及び設備を具備させる(なお、旅客定員については、平成7年6月に、車両積載台数の2分の1以上を目安とする等の緩和措置が採られている)。