事例19 山梨県・早川町(人口1,978人 面積369.86km2)
〜日本上流文化圏研究所〜
1. 交流事業の契機
早川町は、山梨県の南西部に位置し、静岡県と接する山間の町である。南アルプスの南嶺2,000m級の山々に抱かれ、町の中央を富士川の支流早川が南流している。町内には、大小の滝や、白鳳渓谷、早川渓谷、雨畑渓谷、保川渓谷があり、四季を通じてすばらしい景観が見られる。
町では日本・上流文化圏構想を打ち出し、その一環として、平成8年4月に川の上流域の意味と価値、そこで暮らす人々の未来を考える機関として「日本上流文化圏研究所」を開設した。その背景には、今後は上流圏・農山村地域といった早川町と同じような条件を持つ地域と、情報の交換や人々の交流を深め、広い視野を持ちながらそれぞれの地域で課題に対応していくことが求められているという町の理念がある。
2. 交流事業の経過・概要
川の上流は、最も純粋な水を天から受け取るところで、いわば「いのちの源」といえる。
日本の上流圏には700あまりの町や村があり、それぞれ知恵を出し汗を流し、世界の上流圏とも交流を行いながらたくましく生きている。日本上流文化圏研究所は、こういった地域で生きることの誇りを高々と掲げ、豊かな自然とともに上流地域の人間から新たな暮らし、文化を構築しようと生まれた。本来、いのちの源であった上流圏は、産業の進展、都市の発達により、山は人工林となり、川は発電のために水量が減り、水防砂防ダムで固められた。経済の論理が優先し、林業は弱まり、過疎と荒廃に揺らいでいる。この上流圏の現実を未来へ向けて乗り越えようというのが、町民と研究所の意思である。
研究所では地元研究員と全国各地のネットワーク研究員90人で、互いに交流を深めながら上流文化圏の情報収集・調査研究を進め、その成果を早川町や他の上流文化圏で活用している。
水文化や森文化の中で生活しているという視点から、上流の山村に連帯を呼びかけるとともに、中流の農村や下流の都市とともに対等にその役割を担いながら、行き詰まりを見せている現代社会の環境と文化の再構築を考えている。