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農業の主力は、粗生産額からすると、稲作(平成6年の総粗生産額の29%)。ブロイラー飼育(43%)、肉用牛飼育(9%)、野菜栽培(8%)などである。林業も盛んである。森林面積の84%が私有林で、素材生産が総林業生産額の73%を占めている。

第2に、建設業・製造業は徐々に拡大しているものの、就業人口で3割ていどに留まっていること。とくに製造業は誘致企業があるが、事業所数は10と少ない。

第3に、サービス業が着実に拡大していること。これは、後に見るように、「百済の里づくり」やオートキャンプ場のオープンによる観光産業の展開によるところが大きい。観光客の入込客数は、平成元年の7,679人から、平成2年の47,271人、平成7年の90,852と急増した。今年(平成10年)9月にオープンした南郷温泉「山霧」は好評で、観光客数の倍増が期待されている。

 

(2)  「西の正倉院・百済の里・南郷」

南郷村では、昭和61年度以来、「西の正倉院・百済の里・南郷」を基本コンセプトとした村づくりが、精力的に取り組まれている。西暦660年に滅んだ朝鮮半島の古代国家・百済の王族が移り住んだとの伝説、村内にある王を祀ったとされる神門神社より奈良正倉院の所蔵の国宝と同一と思われる銅鏡などの発見、別れ別れに漂着した百済王親子が年に一度再会するという、神門神社と90km離れた比木神社(木城町)が合同で行なう、百済の風俗を色濃く残す「師走まつり」の継承、など、南郷村特有の文化・伝統に基づいての村づくりである。この村づくりの重要な事業として日韓交流がある。その交流の主なものと、それにかかわる諸施設の開設等を表2に示した。(平成7年以降の記入が少ないのは、十分な資料を欠いているためであって、事業が縮小されている訳ではない。)まさに官民、産学を含んでの多彩な交流が展開されているのである。国際交流委員についても、欧米諸国から迎える自治体が殆んどだが、南郷村のばあいには、委員を韓国から招聘している。委員には、中学生に対してだけでなく、一般村民を対象とするハングル語講座を開いて指導に当たることが依頼されている。

青少年日韓親善交流事業は、このような村を挙げての日韓交流の一翼を担う事業である。南郷村の交流事業としては、この他にも、在日韓国人居住者の多い神奈川県川崎市桜本地区との小学生の交流事業、および同名の町村による「南郷サミット事業」が実施されている。以下、これら3事業について詳しく見ることにする。

 

 

 

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