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ジャズと神楽の呼吸が微妙にマッチし受ける。このライブは、毎年8月に開催され、県内外から約5千人が集まるほど人気がある。和と洋のドッキングという奇抜なアイデアが成功した。若者から高齢者まで参加できるユニークなイベントが人を集め交流を生み、活性化の起爆剤となっている。若者の定住につなげるという狙いもある。「神楽はこんなによいものだったのか」と神楽座に入る若者も増えているという。

 

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(1) 交流の相手として1) 北九州の中核都市である福岡市、2) 県内の近隣都市である大分市、別府市、3) 姉妹都市の福岡県庄内町、の三つの地域を特定し、それぞれ目的を持たせた交流スタイルは、循環型の交流の成熟に有効な手法と思われる。

(2) 交流が成果をあげるためには、交流の主役である住民の意識の成熟が肝心たが、この点、現地調査で懇談した住民の人たちの中に優れたリーダー性を感じさせる複数の人材がいたのが印象的で心強い。

(3) 交流相手を受け入れる形であるため、受け入れ側の“サービス過剰”気味の傾向が反省点として指摘されたが、交流を軌道にのせるためにも、これは積極的に議論すべきで、当面はやむを得ないだろう。相互に訪れ合う循環型の交流システムが定着すれば解決できる問題であり、息の長い視点で考えるべきだと思う。“過剰サービス”と考えては、サービスを受ける側の心の負担となり、せっかくのサービスがかえって真の交流を阻害することになりかねない。

(4) 庄内町は神楽の里で多彩な神楽イベントが展開されているのが印象的だが、中でも神楽とジャズをドッキングさせた「ミステリアスライブ・イン庄内」はユニークでアイデア賞ものだ。より有効に活用したい。

(5) 課題の一つとして町全体のホスピタリティ戦略を挙げたい。一般に、過疎地の人たちは“つきあい上手”とは言えない傾向があるが交流の成熟には“つきあい上手”になることが肝心。相手に「来てよかった」「また来たい」と思わせるような確かなホスピタリティを地域に浸透させたい。行政と住民がホスピタリティを語り合い、納得のいく交流活動を展開したい。

(6) 庄内町の交流の歴史は浅く、行政も住民もまだ試行錯誤の部分を残しているという印象を受ける。今後、入り込み観光客の増加に対応する宿泊施設の整備、町が要望している道路整備など課題も多い。しかし、行政も住民も交流に意欲的な努力が感じられ、交流の理念もしっかりしている。一村一品という大分県の長い歴史の実績があるからだろうか。

 

 

 

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