4 グリーン・ツーリズムの時代
近時盛んに唱えられているグリーンツーリズム(Green-tourism)とは、「緑豊かな農村地域において、その自然、文化、人々との交流を楽しむ、滞在型の余暇活動」(21世紀村づくり塾『グリーンツーリズム』1992年)のことである。フランスやイギリスではやく唱えられていたグリーンツーリズムがわが国で農政上の政策課題として取上げられたのは平成3(1991)年のことであるが、構想としては昭和46年(1971)、農林水産省によってはじめられた「自然休養村」にはじまるといってよい。その目的とするところが、「農山漁村の自然環境の保全、農林漁業資源の多目的な活用等を通じて、当該地域の農林漁業者の就業機会の増大と農林漁家経済の安定向上をはかるとともに、都市生活者等に対し、農山漁村の豊かな自然と農林漁業に親しみつつ休養の場を提供すること」にあったとすれば、グリーンツーリズムの言葉こそ出ないものの、その趣旨はほとんど重なり合っているといってよい(田辺一彦「わが国におけるグリーン・ツーリズムの現状と課題-農村地域の変容についての-視点-」浮田典良編『地域文化を生きる』1997)。 それがあらためてグリーン・ツーリズムの名で強調されはじめたのは、事態がさらに深刻になったことを示すと同時に、その期が熟して来たといえる要素がある。
日本型グリーン・ツーリズムの条件なり特徴をもう一度あげてみる。先掲田辺論文に引用されている山崎光博他『グリーン・ツーリズム』(1994)での要約が参考になろう。
(1) あるがままの自然の中でのツーリズムであること。
(2) サービスの主体が農家などそこに居住している人たちの手によるものであること。(3) 農村地域のもつさまざまな資源、生活、文化的なストックなどを、都市住民と農
村住民との交流を通して生かしながら、地域社会の活力の維持に貢献していること。
こうしたグリーン・ツーリズムがなぜ最近になって注目されるようになったのか。いくつかの理由があげられようが、根本的には地球的な規模で進行している自然環境の破壊に対する反省が、人々の目をあらためて自然を残す田舎へ向かわせ、農村回帰ともいうべき現象をもたらしたことである。しかしそれを可能にした現実的な要件は、これまで長年にわたり過疎対策の重点施策として行われて来た道路網の整備にあったのは逆説的である。