1 石見町の概要
朝まだき、雲海が晴れるまでには時間を要したが、そこに姿を現したのは左右にひろがる山なみと、その麓のあちこちに点在する民家の赤屋根だった。原山展望台からの眺めはまさしく一幅の絵画だった。
石見町は島根県のほぼ中央部、邑智郡のなかでは西部に位置し、600〜800メートル級の山岳に囲まれた盆地一里山のまちである(図1)。降雪期間は年100日をこえることも珍しくない豪雪地域であり、過去にも豪雪のためにたびたび大災害を受けている。とくに昭和38年の場合、積雪は4.5メートルにも及び、400〜500人もの出稼ぎを余儀なくされたという経験をもつ。総面積は137.36平方キロメートル、うち84%を山林原野が占める。人口は昭和25(1950)年の11,148人をピークに以後減少し、平成7(1995)年現在で6,761人、これは45年間に4割減少したことになる。ただし減少の度合いは昭和50年代に入ってわずかながら鈍化し、昭和60年前後には一時微増に転じたこともある(図2)。これはその前後から転出よりも転入が上回ったことと表裏の関係にある(図3)。前後して小学校や中学校の児童生徒数が微増しているのも同じ理由である。しかしその後ふたたび減少に転じている。高齢化率も37.9%に及んでいる。