私が初めて藤沢市民オペラに参加させて頂いたのは、今回と同じように、合唱人数を多く必要とする「トゥーランドット」でした。普通でも上演される機会の少ない超大作に出演できる幸運を喜ぶひまも無く、厳しい稽古に追われた半年間だったとつい思い出してしまう程、「リエンツィ」の楽譜は私を驚かせてくれました。何といっても、合唱の出番の多さにはびっくりしました。ああ、これが合唱オペラと呼ばれる理由かと納得すると同時に、藤沢市民オペラの合唱に対する期待の大きさを痛感した瞬間でもありました。
立ち稽古も半ばになると、家庭や仕事と練習を両立させるという、精神的にも肉体的にも一番辛い時期に入ってきます。にもかかわらず、オペラの舞台に立ちたい、プロの方々と舞台を作り上げていく喜びを味わいたいというエネルギーは増してきます。“民衆”という役作りも熱が入り、自然に立ち姿や目の色が変わってくるのです。今回の舞台では、そのエネルギーを集結し、“日本初演―リエンツィ”の名にふさわしく、大ホール内に満たすことのできるようベストを尽くしたいと思っております。
最後になりましたが、裏舞台でいつも支えて下さる方々と、藤沢市民オペラを温かく見守って下さっている市民の皆様に、心より御礼申し上げると共に、藤沢市民オペラの益々のご発展をお祈り申し上げます。
慶應義塾ワグネル・ソサィエティー男声合唱団
責任者 松田善幸
日本の市民オペラのモデルを常に提供しつづけられます藤沢市民オペラ、ワーグナー「リエンツィ」に一大学合唱団としてこうして参加できますことを、大変変光栄に存じます。参加にあたり、お声をかけて下さいました畑中良輔先生、不慣れな私どもを親切に導いて下さいました藤沢市民会館の方々、藤沢市の合唱団のみなさま、並びに今宵の舞台を支えてくださる多くの方々に、団員一同、心から御礼申しあげます。
慶應義塾ワグネル・ツサィエティー男声合唱団は、その名をリヒャルト・ワーグナーから頂いております。その私どもが、「リエンツィ」の日本初演に参加できますことはその名を背負う意味で、おおきな責任感を感じて臨んでおります。
今回参加する38名は、学校の授業と通常練習との両立をはかりながら夏から稽古に励んでまいりました。私どもは常日頃から「音楽を通した人間形成」を目指して活動しております。アマチュアの音楽は経過が大切だといわれますが、練習を重ねることで、ある意味でプロにも負けないような音楽を作ろうと努力してまいりました。そこでは、同世代からはもしかすると失われつつあるようなものを不器用にも守ってきたような気がしております。そして、この藤沢市民オペラにも私どもは同じような精神を感じ、いたく感銘を受けました。今宵の成功のために、舞台では全力を尽くしてまいります。