第3幕
不安は現実のものとなった。夜陰にまぎれてローマを抜け出した貴族たちが挙兵、攻め寄せてくるという報せが入る。リエンツィは今こそ貴族を壊滅させる大義名分ができたのだと言って、人々の士気を鼓舞する。アドリアーノは、自分が父親とその一統をなんとか説得してみせるからと、リエンツィの翻意を促すが、今度ばかりはリエンツィも彼の願いをはねつけ、戦場に赴く。イレーネをあきらめきれず、かといって父親を見殺しにもできずに苦悶するアドリアーノ。不安に怯えて待つ女たちのもとに、やがて民衆軍が凱旋してくる。運ばれてきたコロンナの遺体を目にしたアドリアーノは激情に打ち克てず、リエンツィへの憎悪を掻き立てられて、親の仇を討とうと心に誓う。味方側から少なからぬ犠牲者を出した民衆の心もまた、晴れない。リエンツィが法のとおりに貴族の首領を処罰していれば、あたら多くの命が失われずにすんだものを。わだかまる不信感…
第4幕
リエンツィとローマをめぐる趨勢は今や大きく変わりつつある。新体制樹立をことほぎ友好の手を差し伸べた国々が、神聖ローマ皇帝選出へのリエンツィの介入を不満として、ローマに背を向けはじめたのである。と同時に教皇庁はローマ市民を賊と決めつけ、貴族を支持する方針をおおやけに打ち出す。そのような危機約状況にあって、人々は、リエンツィが自分たちを裏切り、貴族や外界勢力と手を握っているのではないかという疑念を押さえることができない。何しろ彼の妹はコロンナの嫡男と恋仲にあるのだ。民衆たちのもとにアドリアーノが現われ、リエンツィの裏切りを証言、今すぐにも、彼に私刑を加えるべきだと彼らをけしかける。おりしも、この日は教会でローマの勝利を祝うミサがあげられる予定。枢機卿を先頭に盛装した司祭たちが教会に近づくのを見て、教皇の支持がいまだリエンツィにあると誤解した民衆は、リエンツィの暗殺をためらう。ところが、あろうことか、枢機卿は彼に破門の宣告を突きつけ、護民官は孤立無援の状態に陥る。
第5幕
カピトールの広間で独り、ローマヘの熱い思いを吐露するリエンツィ。今死んでは、民衆の解放とローマの栄光という理想も道半ばにして潰えることになる。だからどうか、自分に今一度、力を授けたまえ…。すでに建物は、民衆たちに取り囲まれている。リエンツィが彼らの前に姿を現わし、自分とともに誓ったローマへの忠誠を思い出すよう諭すが、暴徒と化した群衆はそんな彼に火の塊を投げつけるだけ。やがて、炎がカピトールを包み、建物は崩れ落ちて、リエンツィはイレーネ、そして彼女の身を救おうと駆けつけたアドリアーノともどもその下敷きになる。