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開会式に続いて行われたディナーの席上でも、尊厳のテーマは語り続けられました。当日の司会者で、作家でありクリントン政権のチーフ・アドバイザーでもあるジェイムス・カービル氏は、氏の祖父にあやかって名づけられたカービルの町とそこに設立された米国国立ハンセン病センターに触れて『……わたしはカービルという場所で、ハンセン病の施設にかかわる多くの人たちの中で育ちました。……世界の各地からこの施設に集まって来た人々の中で育ったので、私は一般の人とは違った育ちかたをしました。開かれた心で育ち、当時は一般的であった偏見を抱かずに成長しました。……もしも、どこかほかの場所で成長していたならば、いろいろな偏見にとらわれていたかもしれませんが、ハンセン病のお陰で自由だったとおもいます。』『……私には二歳の娘がいますが、娘には私が人生を共に歩んできたダリルやベティ(何れもカービル療養所在住の回復者-訳者註)やその他の人々と一緒に写真を撮って欲しいと思っています』とカービルの居住者たちとの個人的な交流について思い出を語りました。

 

カービル氏はさらに『ハンセン病との戦いは単に医学的な戦いではなく、精神の戦い、無知と偏見との戦いで、これらに打ち勝つほうがもっと困難です』と述べ、引き続いて、クリントン大統領のメッセージを読み上げました。

 

この中でクリントン大統領は、社会啓発活動の必要性を強調し『……ハンセン病はこの50年の間に、不治の病、患者が社会から疎外される病から、外来治療で2年足らずの間に完治する病気になりました。国連展示のテーマである「尊厳の確立」は、偏見と差別をなくすために、この病気について世界の人々を啓発することの重要性を力説しています。総ての人に平等な対応を保証する重要な第一歩は、われわれの用語から「レパー/Leper」という忌まわしい呼び名を永久に追放することです』と提唱しました。

 

「レパー/Leper」という言葉の追放は、スピーカーのー人であるバーナード.K.プニカイア氏も『この言葉は、私たち全員にとって侮辱的で不快な言葉です。この言葉が向けられるとき、患者・回復者は一人の人間としての個性を失い、その社会への貢献も消滅し、人間であることから単なる病気に貶められてしまうのです。……この病気を体験した私たちは、他の何であったとしても、絶対に「レパー・Leper」ではありません。それだけは絶対に違います。この言葉はわれわれの人間性を見ることなく、われわれを単なる一つの病気として定義してしまうのです。これを許すわけにはゆきません』と強調しました。

 

 

 

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