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国際保健協力フィールドワーク・フェローシップに参加して

 

増澤亜紀(聖マリアンナ医科大学3年)

私は今回のフィールドワークに参加するまで、ただ漠然と将来は海外医療援助に関わって医者の過剰時代を迎えている日本とは違う医者を必要としている途上国で医療に貢献したいと考えていたが、この体験で今までの自分の考えの単純さ、無知さを十分に思い知らされた。

そもそも海外医療援助をPrimary health careの存在を無視して、よくマスメディアで取り上げられている災害・飢餓難民や戦争避難民への緊急医療援助だと思っていた自分が今ではとても恥ずかしくなってきたのが正直な気持ちである。

今回のフィールドワークでの様々な人々との出会い、語り合い、そして訪問の中で最も強く感じたことは、「医療の限界。医療は文化を変えられない。」ことである。特にフィリピンでは、何にも上に宗教思想が強い(至る所にお金をかけた立派な教会があった)。いくらWHOやNGOが質的向上を目指した援助を行うにしても、まずは現地住民の中に入ってその文化や考えを理解・把握し、住民の保健衛生に対する意識を向上させるためには医療よりも何よりも啓蒙活動をすることが非常に重要であることを学んだ。

JICAがfamily planningの一つとして行っている「Papet Show(人形劇)」やIEC(Information, Education, Communication)のVTRを折り込んだ「Film Show」を真剣に見入っている住民たちの姿に、初めの第一歩の国際保健協力の在り方を切実に感じさせられた。

そして、私にとって忘れられないショックな出来事がある。

それは、スラム街(トンド地区)に住むある家族を訪問した時に予防接種も受けられなく体重がかなり減少し貧弱な体つきをした少女の手を握った瞬間である。あまりにも細かった。あまりにも弱々しかった。

WHOやDOHの話では予防接種の普及率は高いと自信げに関係者は話してくれたが、実際には予防接種を受けることが出来なく、栄養失調状態の子供が存在することに表と裏の現実世界を見たような感じがした。しかし、こうした状況下でも母親たちの運営によるCPCDでは子供たちの環境改善のために給食活動や衛生・栄養学の勉強などに奔走する屈することのないフィリピンの女性パワーには圧倒された。医療の本来の姿は、systematicなものではなくin the communityレベルであることをこれらの体験を通して再確認し、私の国際保健に対する理解・意識が確実に変わった。

 

 

 

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