国際保健協力フィールドワーク・フェローシップに参加して
小池清美(久留米大学医学部5年)
今回、国際保健協力フィールドワーク・フェローシップに参加して、「国際保健協力とは何か?」ということを具体的に考えるきっかけになりました。今までは、漠然としたイメージしか持っておらず、どのようなプロセスを踏んで国際保健というものが行われているのかについて断片的な知識しか持ち合わせていませんでした。衛生環境が悪く、また医療を十分に受けることができない人々を本や新聞で見る度、「医療者としてなにかしてあげれたら」という気持ちがあり、自分には何ができるのかということまで考えが及びませんでした。
国内研修で様々な方面でご活躍になっている先生方の講演を多く拝聴しましたが、自分が実際に見て、聞いて、感じて、問いかけて、そして考えて初めて「国際保健協力とは?」という大きな課題が自分自身の中にしっかりと根付いたと思います。
国内研修で、一番印象的だったのは、多磨全生園です。ハンセン病が抱えている、抱えていた、日本国内での歴史、問題、矛盾、そして海外での実状を学ぶことができたのは、人として、同じ過ちを繰り返さないためにも大切なことです。紀伊国先生がおっしゃっていたように医師の役目は、「病を治療する」ことはもちろんですが、「社会を治す」というさらに大きな役割を担っています。そういう意味で、医師は、不条理から生じた社会の偏見に立ち向かうのに、最も力になるべき社会的役割と社会的能力があることをハンセン病資料館で学びました。そして、何より勇気が必要だということも、フィリピンの「革命の父ホセ・リサール」の歴史を見て感じました。
結核研究所では実際に活動をなさっている先生から、実際の活動内容の流れ、実施方法、問題点を聞き、国際活動が行われるまでの流れを掴むことができました。国内研修で有意義だったことの一つに、国内研修、海外研修の学生が自主的に集まって、国際医療についての具体的な疑問点を話し合ったことがあります。国際医療に対して皆が興味を持っているのですが、各個人でその着眼点が異なり、色々な方面から国際医療を考えるきっかけになりました。
例えば、私は、「その国の文化や慣習に沿うように、どのように活動を行い、具体的に、そこにどのような問題が生じ、どのように解決し、どのような方法で多くの人に広めているのか」ということが知りたかったのですが、国内研修の1メンバーの意見では「フィリピンの人は、頭が痛くなったら、お腹が痛くなったら、まず最初になにをするんだろう」という、素晴らしい意見がありました。私は、それこそが最も基本的な見解だなと感心し、実際にフィールド・ワークでもそういう観点から見ることを心がけました。
海外研修で、WHO西太平洋事務局を訪れることができたのは感動です。WHOなどの世界単位で取り組んでいく国際保健の場では、まず、日本人として国際保健に取り組む姿勢や、政治的な問題を知ることができました。WHOの目標は「最大限の人の幸福」です。WHOにはWHOの組織力を持って取り組むべき問題があり、そして、NGOではNGOだから発揮される活動があります。WHOは政治的なカラーが強いのですが、何よりも国際保健で大切なのは、お互いの条件を最大限に生かすことです。