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国際保健協力フィールドワーク・フェローシップに参加して

 

富塚太郎(京都府立医科大学5年)

「人の健康」というものを強烈に頭に置きながらこの5年間勉強してきまして、さてどう社会と関わっていくかと考え出したとき、私の思考は医学部受験生の時のものに戻っていきました。それは「多く多く-日本人でも外国人でも」というものでした。

生命科学の先端で成果を上げる大学での医療に魅力を感じながらももっと多くの人と関わりたい-。そこで関心を持ちましたのが医療行政と他国への医療協力であり、今回の国際保健協力フィールドワークフェローシップに応募した動機でもあります。このような曖昧な動機のものも受け入れて下さった笹川記念保健協力財団をはじめ、お話しして下さった先生方、関係機関各位に感謝いたします。

この文章を書く際に、フェローシップ中にメモしたことや写真などを見ながら、私の中に新しい感覚が芽生えてきたのを自覚しました。フィリピンのNGOで活動するお母さん達の子どもたちが生活する環境を良いものにしようとする熱心さと、政府は何もしないどころか自分たちの生活を脅かそうとしていることに対する憤りの激しさ、WHOの先生方の「全ての人に健康を」という熱意とプライドなどが胸に迫り、それに感化され、何かせずにはいられない熱い想いが宿ったのです。そしてこれは私のこれからの原動力となると感じています。

実際、私の「多く多く」の問題は当初感じていたような単純な問題ではなく、「最大多数の最大幸福」原則に基づいた限りある医療資源の分配の方法と、それがはらむ残された問題への対処についてや、資源の有効利用法の検討と利用後の評価が明確になされていないことなど、多くの問題を抱えていることが分かり、そして私は頭を抱えもとの場所へ戻ってきたという感じです。

フェローシップで得た成果は国際医療保健に関する知識や体験、志を同じくする仲間はいうまでもなく財産ですが、一番は私の中でのフィリピンの人々の生活の強烈なリアル感、そして「フィリピンへの愛着」であると感じています。これはWHOでDr. Hanがおっしゃっていた国際協力に必要なmind-To love to like-につながっているような気がしているのです。

 

 

 

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