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フィリピンで学んだこと

 

舟橋敬一(東京大学医学部5年)

今回、国際医療協力の行われている現場を様々なレベルで見せていただいたが、どこへ行っても感じたことは、結局は人間の仕事なんだということ。そして、たった一人の動きでも、全体の動きになりうるということであった。WHOが何かするわけではないし、JICAが何かするわけでもない。また、地域の住民に歓迎されたり、拒否されたりすることもない。確かに組織がくっついている場合の特殊性というのはあるが、一義的には一人一人の人間だ。自分という人間とその願いをどのように育てて行くか、また、情熱をどのように伝えて行くかということがとても大切な問題なのだと思った。

見学中、いろいろな示唆を受けたが、中でも、スラム街を訪問して、また、村の子ども達を対象にした健康教育のプログラムの現場を見て、子供の教育(健康教育を含めて)と社会の連携づくりをまとめたプログラムというのが意味があるのではないかと思った。

途上国では貧困がもっとも根本的な問題であるが、貧しさの問題は単にお金がないと言うだけではない。もっと重要なのは家庭が乱れると言うことらしい。父親が僅かなお金をお酒に使ったり、家に帰ってこなかったり、夫婦喧嘩のたえない中で子供が育っている。

確かに貧しさを解決すればほとんどの問題を解決できるのだろうが、問題は貧しさからでてきた二次的なものらしい。スラム街では田舎からでてきたばかりの人達も多いから、近所の人が助けてくれることもない。注意したいのは貧しいから助け合えないのではないということだ。きっかけさえ、出会いさえあれば貧しいながら助け合ってゆける。でも、上述のような家庭は社会的にも孤立してしまう。

いきなり貧困を解決できるとは思わない。しかし、このような孤立や無知を改善できる方法ならある。僕らの訪れたトンド地区のNGOであるCPCDは子供の教育を目的としていたが、子供を通じて、意図してかどうか知らないが、社会をつなげていた。スラム街などではこのつながりを作って行くと言うことがとても大切なのだと思う。

子ども達の中にはいると、彼らが弟や妹のめんどうを実によく見ていることに気付く。また、小さい子はお兄さんやお姉さんを「当て」にしている。子供の教育はその次の世代ではなく彼ら自身と弟や妹の健康に大きな影響がある。実際TV99で上映されている映像や、Teatro99で上演される人形劇に対する反応の良さを見ると信じてよいと思うのである。

やるべきことは沢山ある。自分という資源をどのように使って行くか真剣に考えようと思った。このような貴重な機会を与えて下さった方々にこの場を借りて感謝する。

 

 

 

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