診にさきだって,TVSおよびTVHSを受けた。通常の腟鏡診,骨盤双合診,細胞診などに続いてTVSをおこなった。子宮の縦断像を高輝度の内膜エコーが明瞭に描出できるようにgainを設定し,その大きさを,子宮の長軸に直交するように計測し,その最大値をもって内膜厚とした(図1)。次に,外子宮口をpovion iodineで消毒したあと,8号のネラトンカテーテルを外子宮口から子宮腔内に挿入し,およそ5mlから20mlの生理食塩液を徐々に注入しながら走査し(TVHS),子宮の冠状断像および縦断像を描出し,その所見と内膜組織診の結果を比較,検討した。また,排液は細胞診に供した。使用した装置はAloka SSD-650 CL(3.5 MHz)であった。
表1. 対象患者の主訴
*;子宮筋腫について経過観察した症例
表2. 子宮内膜厚の計測値と子宮内膜異常
表3. 子宮内膜厚計測による内膜異常の診断の精度
(閉経前)
表4. 子宮内膜厚計測による内膜異常の診断の精度
(閉経後)
III 結果
表1は対象患者の主訴とその症例数を示している。不正性器出血を訴えた患者が最も多く,過多月経または貧血がこれに続いた。表2は子宮内膜厚の計測値と内膜組織診の所見を比較したものである。
閉経前の患者について検討すると,子宮内膜増殖症では,その内膜厚の計測値(mean±1SD)は,粘膜下子宮筋腫のそれより有意に高い値を示した(20.9±11.5mm:9.2±5.3mm,p<0.001)。子宮内膜ポリープおよび粘膜下子宮筋腫の内膜厚を比較すると,前者が有意に高い値を示した(17.8±4.9mm 9.2±5.3mm,p<0.001)。子宮内膜炎の症例では,それらの内膜厚の計測値は1.5±0.5mmで,上記のどの異常よりも有意に低い値を示した(p<0.001)。内膜厚の計測値による子宮内膜異常の診断の精度を表3および4に示した。閉経前の患者では,子宮内膜厚の計測値のカットオフ値を11mmとすると,その異常を診断する精度はsensitivityおよびspecificityは,それぞれ0.94,0.90であった。一方,閉経後の患者では,カットオフ値を6mmとすると,sensitivityおよびspecificityは,それぞれ1.00,0.86であった。また,閉経前の患者について,子宮内膜厚の計測値のカットオフ値を11mmにすると,子宮内膜増殖症を診断する精度は,sensitivity 0.94,specificity 0.51,positive predictive value 0.42,negative predictive value 0.96であった。また,negative likelihood 0.12,positive likelihood l.92であった。閉経後の患者について,内膜計測による異常の診断の精度はカットオフ値を6mmにするとその精度が高くなることがわかったが,その値を6mm以上に選んでもその
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