子宮内膜異常の診断における超音波検査
―とくにhysterosonographyの役割について―
広島県・庄原赤十字病院 産婦人科
村尾 文規
要旨
生理食塩液を子宮腔内に注入しながら走査することによって(TVHS),子宮内膜異常の診断の精度を上げることが可能かどうかを検討することを目的として,118名の患者を対象として,その所見を,子宮内膜厚の計測値とともに,内膜の組織診断の所見と比較検討した。閉経前の患者では11mm,閉経後の患者については6mmを内膜厚のカットオフ値とすると,その異常の診断の精度は,それぞれsensitivity 0.94,0.86,specificity 0.91,1.00であった。しかし,内膜厚の計測値の比較では粘膜下筋腫,ポリープ,内膜増殖症の鑑別はしばしば困難であった。TVHSによれば,粘膜下筋腫,ポリープなどは子宮腔への突出像として,内膜増殖症では,不整な内膜表面,子宮腔内での不均一な発育を明瞭に描出することから,これらの異常の診断が可能で,内膜厚の計測値をスクリーニングとして,本法を併用することの有用性を確認した。
I 緒言
経膣走査(TVS)による子宮の断層像は,経腹走査によるものとは比較にならないほど明瞭に描出されることにより,その異常の診断がかなり容易になったが1)2)3)4),この有用性を疑問視する文献もある5)。これは,子宮内膜異常の診断のための内膜厚のカットオフ値の設定が容易ではないこと,また,内膜異常間の超音波検査所見に明らかな差異を見い出せないことなどによっていると考えられる。この研究では,子宮内膜異常の診断の精度を向上させるために,子宮内膜厚の計測,生理食塩液を子宮腔内に注入しながら走査(Transvaginal Hysterosonography,TVHS)することの有用性を検討することを目的とした。