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定し,標準的な方法で処理した。免疫組織化学的染色については,アビジン―ビオチンペルオキシダーゼ複合体法を用いて,パラフィン包埋組織切片で実施した。以下に示した抗原に対する市販の抗体を指示通りに用いた:α1-抗トリプシン,α1-抗キモトリプシン,ならびにS100タンパク質(ウサギ,ポリクローナル抗体,Dako Japan Co,Ltd,京都;1:100希釈);ビメチン,デスミン,アクチン,サイトケラチン(マウス,モノクローナル抗体,Dako Japan Co,Ltd;l:100希釈):p53タンパク質(ウサギ,ポリクローナル抗体,CM-1,Novocastra,Newcastle,英国,1:500希釈)。p53染色のみを行う際には,一次抗体を作用させる前に,パラフィン除去した切片をリン酸緩衝生理食塩水中でオートクレーブ(120℃,20分間)処理した12)13)

 

p53遺伝子の塩基配列決定

通法14)に従って,Sepagene Kit(Sanko Junyaku Co.Ltd,東京)を用いて,患者1の末梢血から高分子量のDNAを精製した。p53遺伝子の第4エキソンから第9エキソンのコーディング領域を標的にしたポリメラーゼ鎖反応(PCR)を実施した。まず,p53遺伝子の第4エキソンから第9エキソンまでの塩基配列を4つの領域(領域1は第4エキソン:領域2は第5,6エキソン:領域3は第7エキソン:領域4は第8,9エキソン)に分けた。それぞれの領域についてポリメラーゼ鎖反応のプライマーを作成して,PCR増幅をすでに記述した方法で実施した15)。RCR反応の産生物をBluescript SKベクター(Stratagene,La Jolla,Calif)にサブクローニングし,その後,大腸菌Escherichla coli DH5a株に形質導入させた。50コロニーのプール16から得られた二重鎖DNAをT3プライマーとユニバーサルプライマーの療法を用いてシーケンシングした。DNAシーケンシングキット(Perkin Elmer,FosterCity,Calif)を用いて,シーケンシング反応を実施し,電気移動とデータ解析はDNAシーケンサー(Genescan 373A,Applied Biosys-tems,Foster City,Calif)を用いて実施した。

 

症例報告

 

症例1

66歳の女性は右大腿部の内側に痛みと腫大があることを主訴として受診した。X線検査を実施して,5×3×3cmの腫瘍塊は軟部組織の深部に存在していることが明らかになった。この腫瘍を外科的に切除して,悪性線維性組織球腫であると診断した。術後経過は順調であり,腫瘍の再発や転移は認められなかったが,2年後に胃癌が認められた。血族結婚の履歴はなく,異常な環境への暴露,神経線維腫症の既往もなかった。

 

症例2

38歳の男性で,症例1の患者の息子。便秘を訴えた。既往歴ではその他の点については特記すべきことはなかった。CTスキャンを実施して,後腹膜領域に大きな腫瘤があることが認められた。S字結腸から膀胱までの間に8×8×5cmの腫瘤があり,S字結腸には浸潤しているが,膀胱には浸潤していないものが手術時に同定された。手術実施から1年後に,腫瘍の局所再発ならずに肝臓ならずに肺への転移により死亡した。

 

症例3

33歳の女性で,患者1の娘。腹部の不快感や腹部膨満が1カ月以上継続したことを主訴として来診。X線検査で,後腹膜領域に大きな腫瘤を認めた。開腹術を実施して,20×14×10cmの腫瘤が,膣,直腸,ならびに膀胱に及んでいることが判明した。手術後に全身状態が著しく悪化して,肺ならずに肝臓に大きな転移があったために,手術から6カ月後に死亡した。

 

結果

 

病理所見

症例1

切除した検体は,5×3×3cmの小結節性の弾力性のある硬い腫瘤であった。断面は黄白色をしており,限局性の少ない縁部をしていた。組織学的には,優勢に認められるパターンは,線維芽細胞様の太った紡錘細胞が花むしろ状のパターンを示しているものであった(図1,a)。検体の別の部分では,有糸分裂活動をしている太った組織球様の細胞と多くの多核巨大細胞の存在が顕著であり,“多形性タイプ”を示していた。泡沫状の組織球ならずに炎症細胞の浸潤も認められた。免疫組織化学的には,線維芽細胞様

 

 

 

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