家族歴:特記事項なし。
現病歴:平成9年11月より肩甲帯〜両側上腕部の運動痛と圧痛あり,消炎鎮痛剤処方するも完治せず体重も2kg減少し,平成10年1月25日より白色痰を伴う湿性咳嗽,食欲減退・全身倦怠感,平成10年1月26日に37.3℃の微熱と肩甲帯から両上腕外側にかけての運動痛と圧痛あり,1月28日に診療所を受診した。
初診時現症:体温37.3℃,眼瞼・眼球結膜に貧血・黄疸を認めず,表在リンパ節腫大なく,側頭動脈の圧痛,腫脹なし。肺音・心音異常なし。肝・脾腫なく肩甲帯から両上腕外側にかけて運動痛と把握痛を認めたが熱感や腫脹,筋力低下,筋萎縮はなく,その他神経学的に異常は認めなかった。
検査成績:白血球12,100/mm3と軽度増加あるも左方移動はなく(stab 0%,seg 68%),貧血はなかった。ESRは120mm/1hrと著明に亢進し,生化学検査ではα2グロブリンが定量で0.84g/dl,CPKは正常,血清学検査ではCRPが3+,リウマトイド因子(RAHA)と抗核抗体は共に陰性で,血清補体価(CH50)は61.6と軽度上昇していた。胸部を含む肩関節・上腕部のレントゲン所見,腹部エコー所見,腫瘍マーカーに異常はみられなかった。
臨床経過:検査結果より悪性疾患や他の膠原病などは否定的と考えられた。Birdの診断基準およびPMR研究班の診断基準に基づき,本症例をPMRと診断し,2月25日よりプレドニン20mg/日を開始したところ,1週間後には筋痛の消失,1カ月後にはCRPや赤沈値は正常化し,3カ月後には5年前の体重まで回復し,現在プレドニン7.5mg/日で安定している。
症例2:89歳,男性。
既往歴:慢性腎不全(両側腎結石症,両側多発性嚢胞腎),骨粗鬆症,パーキンソン症候群,多発性胃・十二指腸潰瘍,前立腺肥大
家族歴:特記事項なし。
現病歴:平成10年1月30日より37.2℃の微熱と両上腕と両側膝関節周囲の筋痛出現。関節の腫脹や熱感はみられず,白色痰を伴う咳嗽がみられるため感冒薬を処方したが,平成10年2月2日より全身倦怠感,37.2℃の微熱,項部と両大腿部の圧痛・運動時痛も出現した。翌朝2時間程度のこわばりがあり寝返りも打てない状態となり往診した。
初診時現症:体温37.2℃,眼瞼に貧血を認めたが結膜に黄疸はなく,表在リンパ節腫大なし。側頭動脈の圧痛や腫脹はなく,肺音・心音異常なし。肝・障腫なし。両側上腕部と両側膝関節周囲の運動痛と把握痛を認めたが熱感や腫脹は見られず,筋力低下,筋萎縮も認めなかった。
検査成績:Hb7.9g/dlと正球性正色素性貧血あり(以前より腎性貧血あり),白血球6,000/mm3,血小板 26.6万/mm3と正常であったが,赤沈は151mm/1hrと著明に亢進していた。蚤自分画ではαl,α2分画が上昇し(α2グロブリン定量で1.06g/dl),CPKは正常であった。BUN,Crは脱水の影響もあり,平成9年のBUN 57mg/dl,Cr 5.lmg/dlに比べ,それぞれ102mg/dl,7.2mg/dlと上昇していた。CRPは18.8mg/dlと高値で,リウマトイド因子(RAHA)は陰性であった。
臨床経過:筋痛以外明らかな感染徴候はみられず,PMR研究会における診断項目を7項目中4項目,Birdの診断基準でも7項目中4項目を満たしており,臨床経過からPMRと診断した。しかし,慢性腎不全あり,プレドニンによる治療よりも腎機能の急速な悪化を改善するのが先決であったため,早速他院へ紹介した。その後食事療法と安静のみでCrは5.7mg/dlまで回復した。最終的に腎生検は施行されず,P-ANCAも提出されなかったため,顕微鏡的PNの可能性については不明であるが,経過から否定的であると思われた。現在本島へ転院しており,詳細については不明である。
症例3:80歳,女性。
既往歴:帯状疱疹,骨粗鬆症。
家族歴:特記事項なし。
現病歴:平成7年11月以来,度々38℃前後の発熱と同時に肩甲帯・上背部の運動時痛と圧痛がみられ,複数の病院へ入院,精査したが原因不明で,カルシトニン注射,理学療法などを受け,いくらか軽快していた。平成10年8月2日より全身倦怠感と食欲減退,軽度の乾性咳嗽,37.8℃の発熱,両側肩甲骨内側部の運動痛・圧痛あり翌日当診療所を受診した。受診時37.8℃の微熱・痛みがあったため,ロキソプロフェンを2回使用し,翌日血液検査施行。
初診時現症:両側肩甲部・上腕部の筋把握痛と運動痛がみられるも熱感・腫脹,筋萎縮はなく,側頭