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離島において診断しえたリウマチ性多発筋痛症の4例

 

沖縄県・県立北部病院附属伊平屋診療所内科

林成峰

沖縄県・大浜第一病院内科

高江洲良一

 

要旨

 

沖縄県立北部病院附属伊平屋診療所のある伊平屋島は沖縄県最北端に位置し,那覇より117km離れた,第一次産業を中心とする人口約1,500人の離島である。65歳以上の人口が23%を占めるこの島で,高齢者に多いと言われるリウマチ性多発筋痛症を4例経験した。中でも89歳での発症は稀であった。初診時に躯幹から四肢近位部の筋痛,微熱,中等度ないし高度の炎症所見を認め,BirdやPMR研究班,兼岡らの診断基準を全て満たしたため, リウマチ性多発筋痛症と診断したが,全例とも側頭動脈炎を示唆する所見はみられなかった。治療した3例はステロイドが著効し,現在のところ症状の再燃もなく経過良好である。かつて本邦では稀と言われていたこの疾患も,診断の決め手となる客観的な所見に乏しいため,意外と日常臨床の中で見落とされている可能性があると実感した。それ故,高齢者において急激に発症する筋痛,発熱,強い炎症反応が見られた際には原因疾患のひとつとして本疾患を常に念頭におくべきであると思われた。

Key words:離島診療所,リウマチ性多発筋痛症,筋痛,側頭動脈炎,ステロイド

 

I はじめに

 

沖縄県では40もの有人離島があり,19の島に1人ないし2人の医師が配置されている。伊平屋島は那覇の北北東117kmに位置し,南北約16kmの細長い,人口約1500人の島である。県立北部病院附属伊平屋診療所は伊平屋島唯一の医療機関で,1日平均30名の外来患者が受診する。入院施設はなく,職員構成は医師,看護婦各1名,事務員2名で,脳波計やCTなどを除けば,心電計や超音波装置,上部消化管内視鏡,簡易血液・生化学・電解質測定機器,パルスオキシメータなどを備え,ある程度納得のいく診療が可能である。最寄りの県立北部病院まで定期船と車で約2時間を要し,農業以外ではもずく加工業を島の主要産業としている。

リウマチ性多発筋痛症(Polymyalgia rheumatica:以下PMR)は躯幹及び四肢近位筋の筋痛,発熱,全身倦怠感,食欲不振,体重減少等の全身症状がみられ,赤沈値の亢進,副腎皮質ステロイド剤が著効することなどを臨床的特徴とし,高齢者に好発する比較的予後の良い疾患である。従来欧米では白人に多く有色人種には稀とされていたが,疾患概念の普及により,本邦でも近年多くの症例が報告されている。

今回,我々は伊平屋島において,項・頸部,両側上腕,両肩,大腿部の痛みを訴える高齢者の中から,PMRと診断しえた4例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。

 

II 症例

症例1:65歳女性,農業。

主訴:発熱,肩甲帯〜両側上腕部痛。

既往歴:両側変形性膝関節症。

 

 

 

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