中期) 1997.10-
次には,ISDN回線の広がりとともに診療所のエリアもISDN網に含まれ,市の担当課の理解も得,ISDNを利用し市立宇和島病院に64-128kbpsの高速で接続することとなった。ISDN機器は,NTT-TE社のMN128SOHOと呼ばれるダイアルアップルーター,ターミナルアダプタ兼用のLAN形成用の機器である。この時期には,筆者の自費購入による,Pentium CPUを使用したDOS/V機と通称されるパーソナルコンピューター(PC/AT互換機とも呼ばれる)を複数機設置し,LANを形成している。ISDNによる接続は,初期の設定さえきちんとできると,高速,確実で安定した接続を維持でき,得られるデータ量は飛躍的に増える。
現在) 1998.3-
現在では,診療所内でLANを構築し,LAN全体をISDN回線によって市立宇和島病院に接続し,LAN内の全てのマシンが同時に外部ネットワークと通信可能になっている。また,不時の回線不通も想定し,宇和島地区のボランティアネットワークであるUICに接続,そこからインターネット専用回線を通じてのアクセス,という複数のネットワーク形成を完成している。現在のネットワーク形成を図上に示す。OSはWIN95とFreeBSDと呼ばれるフリーのPC-UNIXである。3機のパーソナルコンピューターは,それぞれLANを形成し,それぞれの重要な機能,データは,互いに補完,バックアップされている。また,pgp暗号化技術による,より具体的な患者情報の交換,メーリングリストによる,特定多数医師の間でのディスカッションも可能となっている。
その暗号ソフトPGP(Pretty Good Privacy)3)4)であるが, これは現在,UNIX上,MS-DOS上,WIN95上,MAC上で使用可能である。これは,電子メールやネットワークニュースで,「公開鍵暗号」という技術と「信用モデル」を用いて,主に「暗号化」と「電子署名」とを実現するプログラムである。
「暗号化」というのは,電子メールを暗号にして,宛先に届く前にどこかで盗聴されたとしても(これは技術的にはかなり簡単にできる),内容が宛先の人以外には読めないようにしておくことである。「電子署名」というのは,差出人が本当にその名前の人なのかどうかを証明する複雑な文字の並びをメールにつけて送ることである。
これらは,「公開鍵暗号」という技術に基づいている。「公開鍵」と「秘密鍵」と2つの鍵の実体は,ある性質を持って関連する2つの数年で,PGPのプログラムによって自分専用に作ることができる。この性質とは,「公開鍵で暗号化したものは,秘密鍵でないともとにもどせず,また秘密鍵で暗号化したものは,公開鍵でないともとにもどせない」というものである。この性質を使うと,たとえば「暗号化」をしたいときに,宛先の人の公開鍵をあらかじめもらっておいて,それで送りたい文を暗号化して送れば,それはその公開鍵に対応する秘密鍵をもっている人,つまり宛先の人本人にしかもとにもどせないことになる。また,鍵をもっていない人が盗聴してメールのデータを手に入れたとしても,暗号化されているので全く意味がわからない。
一方,自分で意味のある文を署名として作っておき,それを自分の秘密鍵で暗号化して送るメールにつけておく場合は,受けとった人は,暗号化されている一見意味不明の部分を送付者の公開鍵で解こうとしてみて,うまく解ければそれが本当に送付者からのメールだと信用することができる。これを「電子署名」という。
そして,信頼関係にある人間相互に鍵をネットワーク経由で送り,互いに署名しあって,それぞれの鍵の信頼性を確認するという信用システムで,その送ってもらった錠自体が信用できる(改竄などがされていない)という保証とする。
簡単に言うと,電子の指紋ともいえる電子錠で個人の識別をし,相手が電子鍵で鍵をかけた錠を相手の錠に対応させた自分の鍵で開き,文書等を読むということである。