・薬剤の説明・服薬指導が、適切・的確に,しかも何度でも聞ける。
・ヒート包装・一包化渡しなど患者にあわせた細かい対応が可能になった。
・誤調剤が減少した。
薬剤師の回答では,以下の点があげられた。
・誤った,または自己判断による内服・外用,重複処方,複数の医療機関から相互作用のある薬剤が処方された際の飲み合わせ,残薬などへの介入が可能になった。市販薬の服薬状況も把握可能である。
・ 処方した薬剤の効果を,自ら確認できる。
・用法の間違い。患者に伝達し切れなかった内容は薬局外来で気付きにくく,居宅での使用法を確認することで,日頃の薬局外来へフィードバックし得る説明の仕方が学べる。
・デメリットとして,患者の経済的負担増と薬局に足を運ぶことへの心身の負担増がある。
保健婦・ホームヘルパーなどの福祉職からの回答は,主に以下のようであった。
・どの薬局でも,在宅患者のみならず,外来患者宅にも薬剤の配達がなされる。特に,虚弱な高齢者は恩恵を受けている。
・ 患者が医師などに言いにくいことなどが話せる新たな場が提供された。
IV 考案
われわれは,医療・保健・福祉の連携の強化とその活性化を図るため,町内の事情を知った薬局が複数施設あることに着目し,医薬分業および在宅ケアの推進という時勢にも乗って,地域薬局を含んだ町ぐるみの医療・保健・福祉の連携システムを開始した。例えば,在宅患者ばかりでなく外来患者にも配薬したり,居宅患者の訪問看護や介護日以外に在宅訪問して安否を気遣ったり,在宅介護支援センターで多職種が情報交換をする在宅ケア会議に出席して意見を述べたり,さらに薬局で得た地域の患者に関する情報を適切な医療・保健・福祉の施設に提供したりというように,薬局薬剤師の意欲的な試みは,各施設の連携の流れを非常に有機的なものとし,事例報告にも示したように,当初の目的を果たしてきている。さらに,こうした状況は,他職種の役割を各職種が考える契機となり,必然的に患者の日常に,より密着した在宅ケアを学ぶことにもなって,多職種が大いに成長するという好循環をも生み出している。公的介護保険にみる,地域資源を組み合わせて調整・活用するというケアマネージメント5)とも一脈通じる機能を先んじて発揮しているということも言える。
このように比較的好ましい印象がある薬局の参入だが,われわれの地域実態調査からは,医薬分業という言葉が,実際に医療機関に通院している患者にさえほとんど浸透していないことが明らかとなった。医薬分業が導入され,薬剤師が薬局外の地域で業務を行うようになっても,その認知度の上昇は緩やかな傾向であった。特に,80歳以上の患者では,言葉による認知度は上昇しなかった。当診療所の外来患者の年齢層よりやや若い患者層で,医薬分業前の調査をした郡部の病院における既報によると,郡部での医薬分業が都市部ほど進まない理由のひとつとして,現行を変えてほしくないという意識のある高齢者が受診患者に多いことがあげられている6)。
また,当診療所外来において医薬分業前後のメリット・デメリットの意識もあわせて調査した。医薬分業前後で比較した意識調査はこれまで余り多くなされてはいない。先の郡部の病院における医薬分業前の報告6)では,メリットの上位に,待ち時間の短縮,処方内容を知り得ること,服薬指導があげられ,デメリットの上位には二度手間,近くに信頼の置ける薬局がないことがあげられていた。当診療所でも大概は類似した結果と言えるが,これらには診療機関の規模や受診者の年齢層,また薬局の業務状況の地域差などが,大きく反映すると考えられる。われわれの調査では,当町での特徴である外来患者宅への配達をメリットとする回答率が医薬分業前,導入後とも最も高く,かつ導入後には大きく伸びた。導入前の高率は,患者サイドの期待を,一方,導入後の高率は,薬局がその期待に応えた結果という見方ができる。また,服薬指導も,導入前後で比較的伸び,さらに信頼できる薬局がないとする回答が導入前後で減ったことも,薬剤師の努力を感じさせる結果である。
このように,医薬分業は,都市部に比べ,へき地を含む郡部では導入しにくい背景はあるが,住民の信頼を獲得する薬剤師の活動が,それをすすめるものと考えられる。