日本財団 図書館


例が何らかの投薬を受けていた。服薬状況を1週間の定期的投与薬剤数に対する服用薬剤数(残置されなかった薬剤数)とすると,訪問薬剤管理指導導入前の平均が85.1%(858/1008錠または包)であったのに対し,導入後は87.3%(835/957錠または包)であった。また,介護者の有無別に同様の検討を行うと,介護者がある場合(32例)の服薬率は導入前87.1%(774/889錠または包),導入後87.6%(748/853錠または包)でほとんど差はみられなかったが,他方,介護者のない場合(4例)の服薬率は導入前70.6%(84/119錠または包),導入後83.7%(87/104錠または包)と上昇していた。

なお,在宅薬剤管理指導に対する満足度について,患者の介護者は,満足,ほぼ満足が53.9%(14/26人),不満,やや不満は3.8%(1/26人),どちらでもなしが38.5%(10/26人),無回答が1人の評価であった。

 

042-1.gif

図3 医薬分業のメリット・デメリットに対する外来患者意識調査

 

<症例提示>

薬局が在宅ケアに参加する意義を実証すべく,薬剤師の服薬状況の観察が貴重な情報源となって,多職種が連携を図り,居宅のままで糖尿病の血糖コントロールに成功した例を提示する。

症例:82歳,女性。独居。古くから,高血圧,糖尿病,四肢機能障害の生じていない脳梗塞後遺症がある。現在,服薬管理が独りではできない程度の痴呆もある。在宅サービスは, 2回/週のホームヘルパー派遣と1回/週のデイサービスを受けていた。1998年1月まで当診療所に通院していた。その後,タクシーでの通院が負担になり,在宅医療に移行した。この頃より,ヘモグロビンA1cが上昇するようになった。しばらくして,本患者の在宅薬剤管理指導をしている薬剤師から3回/日の食後過血糖改善剤が残薬となっているという報告があった。服薬不充分による高血糖の持続と判断でき,コンプライアンスを高めるために, 1回/日の薬剤への変更も考慮はしたが,薬剤の効果に同等のものがなく,3回/日の服薬を可能ならしめる在宅支援が検討された。在宅ケア会議を経て,訪問看護婦・ホームヘルパーの内服時刻にあわせた訪問回数増,デイサービスでは,前日薬剤師が利用帳に薬包を貼付し,それを持参の上サービス中に服用してもらうよう徹底するなど,多職種が本患者の内服率向上という共通した認識で毎日関わるということを励行し,1998年9月には良好な血糖管理になった(図4)。このように,居宅での服薬状況は,特に痴呆患者などの在宅ケアで問題になることが多いと思われ,この視点から今後も薬剤師の役割は大きいことが喚起されるとともに,他職種が密に連絡して服薬の援助にあたる必要性も再認識された。ありふれた例だが,示唆に富むと考え提示した。

 

042-2.gif

図4 提示症例の臨床経過

 

C. 薬局が参加する連携システムについて、医療・保健・福祉に関わるスタッフの意識調査

医師・看護婦の回答として,代表的なものとしては,以下の点があげられていた。

・医療機関での待ち時間が解消した。

・患者の薬識,服薬コンプライアンスの良否のチェックがより可能になった。

・従来していた薬品絡みの業務から開放され,本来の看護に専心できる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION