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B. 在宅ケアに薬局が関与する効果

当町の医療・保健・福祉の連携においては,例えば在宅ケア中の患者に対し,医師・看護婦・ホームヘルパーの訪問,デイサービスなどが提供されている場合,それらの施行日以外に薬局薬剤師が在宅訪問して服薬指導するように調整している。特に,独居高齢者については,毎日誰かが安否を気遣うという観点もあって,より厳密にこの週間スケジュールを立て,実践している。

医療・保健・福祉の連携に薬剤師が不在であったこれまでは,在宅ケアの服薬は,患者本人・医師・看護婦・ホームヘルパー・介護者においてなされてきた。しかし,特に介護力4)の乏しい,痴呆を有するような患者名では,残置薬がみられるなど,在宅ケアでの薬剤服用率は,必ずしも満足いくものとは思われていなかった。しかし,薬剤師が参画してから,薬識,服薬コンプライアンスの確認が厳格となり,これらが不良と思われる患者には,介護者への働きかけ,剤型・包装の仕方の工夫にはじまり,薬剤包装への見やすい日付け記入,服薬確認用のカレンダー記入,投薬回数に合わせて仕切りのある薬箱の設置などが急速に広まった。これらをもとに,毎日,いずれかの医療・保健・福祉の職種が居宅を訪問した際に内服の状況を確認することができる。

そこで,こうした効果をみるため,在宅患者36人を対象に,服薬状況をある1週間の定期的投与薬剤数に対する服用薬剤数(残置とならなかった剤数)として,在宅服薬管理指導の導入前後の薬剤服用率を比較した。特に,介護者の有無の別にも,服薬率を対比しした。

また,在宅患者26人の家族介護者に対して,訪問薬剤管理指導の満足度について,満足・やや満足・可否なし・やや不満・不満の5段階の評価を聴き取り調査した。

C. 薬局が参加する連携システムについて,医療・保健・福祉に関わるスタッフの意識調査

当町在宅介護支援センターでは,医療・保健・福祉の各専門職種が集い,一施設の対処では行き詰まった例などを提起・検討し,各種サービスメニューの調整などを図る在宅ケア会議を主催している。1998年4月から薬局薬剤師は,この会議に出席し,専門職としての立場から発言したり,在宅ケアの臨床を学んだりするようになった。

このような取り組みを開始して約6ヶ月経た1998年9月22日〜9月28日に,薬剤師も含めた医療・保健・福祉に携わるスタッフ26人(内訳:医師1人,看護婦6人,保健婦2人,ホームヘルパーや老人ホームの福祉職員10人,薬剤師5人)に,薬局が参加する当町の連携システムにおけるメリット・デメリットについて,自由に記載する方式でアンケート調査を行った。

 

III 結果

A. 医療・保健・福祉の連携における薬局の参加前後の患者意識調査の比較

医薬分業とともに進めた医療・保健・福祉の連携活動前における調査については,有効回答回収率96.1%(98/102人)で,その回答者の平均年齢は70.1±15.1歳であった。

1]医薬分業という言葉の認知度は低く,その事は外来患者の31.6%(31/98人)に過ぎなかった。特に80歳以上での,その度合いは28.2%(12/39人)と低いものであった。

2]医薬分業に対するメリット・デメリットの調査については,メリットとして,外来患者の居宅への配薬,待ち時間の短縮,服薬指導が比較的多くあげられ,デメリットとしては二度手間,秘密保持に対する不安が多くみられた(図3)。

一方,医療・保健・福祉の連携強化後における調査については,有効回答回収率92.9%(78/84人)で,その回答者の平均年齢は72.4±14.7歳であった。

1]医薬分業という言葉の認知度は,外来患者の41.0%(32/78人)とやや上昇した。しかし,80歳以上での,その度合いは28.1%(9/32人)とやはり低かった。

2]医薬分業に対するメリット・デメリットの調査については,メリットとしてあげられる項目の順位に導入前後で大差はなかったが,外来患者への配薬,服薬指導をあげるものが大きく上昇していた。デメリットの順位も導入前後で著差は認めず,またむしろ近くに信用できる薬局がないという回答が低率になっていた(図3)。

B. 在宅ケアに薬局が関与する効果

在宅患者36人の平均年齢は,78.3±16.7歳で,全

 

 

 

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