地域薬局を取り込んだ包括的な医療・保健・福祉の連携
鳥取県・国保赤碕診療所
小谷 和彦
鳥取県・鳥取大学医学部臨床検査医学
下村登規夫・村上 文代・猪川 嗣朗
要旨
鳥取県赤碕町で最近取り組んだ,地域薬局を含む包括的な医療・保健・福祉の連携システムについて,概説しながら,若干の評価を加えた。門前薬局のない赤碕診療所での医薬分業は施行前には難しいように思えたが,われわれは,もっと包括的な発想で,院外処方への移行を契機に,町内のすべての薬局を医療・保健・福祉の連携に取り込み,在宅を主とする町ぐるみの地域ケアの推進および質的向上を図った。この試みは,特に,外来患者への薬剤の配達,服薬指導,常時介護者のいない在宅患者の薬剤服用率といった点に大きなメリットがあり,さらに医療・保健・福祉の有機的連携の活性化にも寄与した。われわれの経験は,地域の実状に沿えば,地域医療のすすめ方のひとつとして,いわば「薬局の地域化」を促進する方法も考慮すべきであることを示唆している。また,薬局の地域化をすすめるには,地域の医薬分業などに対する認識を変革し,それに基づく薬局のスタイルを構築することが重要と思われた。
I はじめに
赤碕町は,人口8,793人,高齢人口率25.0%の鳥取県中部に位置する農漁村である。
当町でも,人口の高齢化に伴う慢性疾患中心の疾病構造の変化や,生活の質を重視した医療供給に対する住民のニーズなどにより,医療・保健・福祉が連携した在宅ケアサービスの展開が一層望まれる状況にある。現在,当町では,当診療所を含め4診療所と,4開局保険薬局ならずにいくつかの機関で,在宅ケア関連サービスを行っている(図1)。しかしながら,最近まで,これらの機関の連携に薬局は参加しておらず,また,サービスメニューは出揃ってきていたものの,それぞれが個別に活動しているという問題点があった。
在宅ケアヘの取り組みには地域差が少なくなく,各種施設整備の程度にも地域差の存在することが指摘されている1)。われわれは,医療・保健・福祉の有機的な連携とその活性化には,多くの専門職種ができるだけ足並みをそろえて参加する新たなシステム作りが急務と考え,町内の社会資源を総点検した。