次にNo.21とNo.26が病原性大腸菌O1(ベロ毒素陰性)症例で,経過が長かったので詳細を記載する。No.20とNo.21は同一家族(夫の母と嫁の関係で同居)である。
症例No21 37才,女性,養護学校教諭
8月3日夕方,当院初診主訴は嘔気,頭痛(前頭部が割れるような痛み)
現病歴 本年4月,養護学校勤務(転勤)となる。その頃より体重減少6 kg(48kg→42kg)。 7月13日頃より誘因なく水様性下痢が1日3回程度あり毎日続いた。
7月18日,車で1時間30分くらいのA病院を受診し,止痢剤を投与された。
7月19日,下痢は止まったが37.9〜38.0℃発熱する。便秘傾向となり腹部が苦しくなる。嘔気(―),食欲不振(―)。発熱は感冒かと思い常備していた小柴胡湯を7月18日,19日と1包ずつ内服した。7月19日より全身倦怠感,手足のしびれ感あり。
7月20日,37.5℃,夕方,小柴胡湯1包内服。9:00PM頃,テタニー状痙攣(強直=同一姿位で強直状態),意識喪失で救急車にてB病院へ担送され入院する。脳波,頭部CT,胸部X-P異常なく,血液検査で低Ca血症(正常下限)のみ異常。2:00PM頃まで痙攣がとれなかった。その後,甲状腺機能,副甲状腺機能,頚部エコーを行ったが異状なし。点滴後,便秘が治り軟便傾向となる。再度,1日数回軟便が出るようになり毎日続いた(抗生物質は使われていない)。
7月21日,入院中精神科受診をし,テタニー,過換気症候群,適応障害の診断をうけた。これまでは過換気発作なし。
7月26日,退院。
7月30日,左1趾の陷入爪が化膿したため,病初受診したA病院を受診し切開,排膿し,ロキソニン,ムコスタ,セフゾン4日間投与される。別の医院へ処置通院2日。同日,症例No.20の夫の母が当診療所を受診し,食中毒の疑いであったが便細菌は陰性であった。No.20は7月31日には回復し,畑仕事に従事したが肩こりがあった。
8月3日は夫の母親と共に整体をうける(車で約1時間)。
上記経過を経て,自宅と数軒しか離れていない当診療所へ初診した(噂が広がる近医では受診したがらない)。
――著者はNo.30を診療していたうえ,救急車担送時に噂よりチタニー状痙攣発作と推測していたため,すでに食中毒→脱水という先入観あり――
当診療所では時間外のため電解質検査はできなかったが,便直接採取を行った。頭痛(割れるような),嘔気,来院時,2回嘔吐をした。血圧110〜67,脈拍61/整,ラクテックG1000ml液し症状は改善した。
8月4日採血で,血清カリウム3.7(3.6〜4.8)血清カルシュウム8.1(8.2〜10.2),CRP(-),TP6.6,WBC6200でカルシュウムのみ正常より軽度低下していた。
8月8日,便細菌で病原性大腸菌O1(ベロ毒素陰性)が陽性であったため,ホスミシン4日間。
8月11日,優細菌陰性,1日数回の軟便はあったが回数は減った。B病院へ紹介。
8月21日,微熱あり,タリビット(100)投与7日間
8月28日, 治癒 B病院
9月,休日には整体に通う
10月4日,休日なく運動会,子供が発熱したため2日間,不眠不休の看病。
10月6日,6:00PM,嗄声,頭痛,口が強直→手→足と強直。意識レベルII20,往診,セルシン静注,点滴で治癒。
症例No.26 ♀74オ
平成10年8月20日初診,嘔吐,下痢。
8月19日,畑仕事の後に嘔吐あり。1時間3〜4回の下痢あり受診。直接,経肛門便より病原性大腸菌O1(ベロ毒素陰性)陽性。点滴,抗生物質(イセパシン)で症状改善したため,その後来院せず。
9月4日,脳出血後遺症で寝たっきりの夫を定期的往診で訪問中に妻(74才)嘔吐2回あり。再度検便,病原性大腸菌O1(ベロ毒素陰性)陽性,点滴,抗生物質(イセパシン)。
9月11日,症状改善,再度の検便より病原性大腸菌O1(ベロ毒素陰性)陽性,シプロキサン6日間。
9月19日,便細菌陰性,菌陰性化まで2回発症,菌陰性化までに31日間。