図3a/b 症例3
a:回腸末端部の浮腫,潰瘍,出血およびびらんを認めた。
b:11日後,軽快した。
D 症例4
34才,男性。主訴:右下腹部痛,下痢。家族歴:特記すべきことなし。既往歴:急性虫垂炎。現病歴:2日前より,間歇的な右下腹部痛と下痢(軟便)が一日に数回あり初診。受診時現症:右下腹部に圧痛を認めた。腹膜刺激症状はみられなかった。検査所見:白血球数10,100/mm3,CRP1.3mg/dl,便細菌培養でPseudomonas aeruginosaを認めた。大腸内視鏡所見:初診時,回腸末端部に白苔の付着した浅い潰瘍が散在していた(図4)。生検組織は慢性炎症の所見で,肉芽組織は明らかでなかった。経過:当初,特異的炎症性腸疾患が否定できず,全身状態も保たれていたため,まず絶食と補液にて経過を観察した。2日後には症状は軽快し,5日後退院となった。その後,便培養の結果からPseudomonas aeruginosaによる感染性腸炎と診断した。抗生剤の投与を行わずに軽快したことは,起因菌が弱毒菌であったためと考えられた。しかし,健康成人に感染した誘因は明らかでなかった。
図4 症例4
回腸末端部に白苔が付着した浅い潰瘍を認めた。
図5a/b 症例5
a:回腸末端部に多発性のびらんと浅い漬蕩を認めた。
b:28日後,軽快した。
E 症例5
38才,女性。主訴:右下腹部痛,下痢,嘔吐。家族歴:特記すべきことなし。既往歴:急性虫垂炎。現病歴:8日前より,間歇的な右下腹部痛と下痢(軟便),嘔吐があり初診。受診時現症:右下腹部に限局した圧痛を認めたが,腹膜刺激症状は伴わなかった。検査所見:白血球数5,800/mm3,CRP0.9mg/dl,便細菌培養は陰性。大腸内視鏡所見:初診時,回腸末端部にびらんと浅い潰瘍が多発していた(図5a)。また,回盲弁に発赤を認めた。生検組織は強い炎症性変化を認めた。肉芽組織は明らかでなかった。小腸造影で回盲部より口側30cm付近に10cmにわたり偽憩室様粘膜不整を認めた。経過:内視鏡所見,小腸造影所見,skip lesionから診断基準8)よりクローン病(小腸型)の疑診と診断した。絶食,中心静脈栄養にて加療したところ,6日後には症状はみられなくなり,食事を開始したが再燃はなく,10日後に退院した。28日後の内視鏡所見でも回腸末端部病変は軽快していた(図5b)。その後, 3年間経過を追っているが症状の出現をみない。本例では薬物療法を併用せずに,寛解を維持しており,初期治療が奏功した可能性も考えられる。
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