D24.4%)>農村地域9.9%(同E11.2%およびF2.9%)となった(表1)。これらの結果は,同一地域内の学校間のツ反陽性率の差(それぞれ5%以内)よりも,各地域間のツ反陽性率の差(それぞれ10〜20%)の方が大きいことを示していた。
このツ反陽性率の地域格差に関する影響要因として,第一に,医師による乳幼児期BCG接種の技術差による影響の可能性を検討した。保育園児のBCG接種針痕(9個以上)の地域別保有率の検討では,漁村地域6.0%,中間地域9.4%,そして農村地域6.7%となり, 3地域間の園児のBCG接種針痕の保有率の差に,有意は認められなかった(表2)。さらに,農村地域の0-1才児の保有率は100%を示していた。この結果から,BCG接種時の技術的要因がツ反陽性率の地域格差を生じていたとは考えられなかった。本邦での,ツ反陽性率の地域格差に関する報告では,ツ反陽性率とBCG針痕数との比較検討から,その原因を求める研究が多い1)2)。しかし,BCG接種針による乳幼児の針刺傷の予後には,各個人の宿主の反応等の違いから,願痕〜BCG接種形跡の完全消失など,多様な結果が予想される。したがって,学童のBCG接種針痕数をBCG接種時の医師の技術的問題と関連させることには,他の諸要因の充分な検討を前提として,慎重におこなわれる必要があると考えられる。ちなみに,BCG接種針痕とツ反陽性率との相関がなく,かつ,ツ反が陰性(発赤経3mm以下)の子供4人のうち2人(50%)がBCG接種針痕を保有していた,との海外報告もある4)。
第二に,ツ反判定医師の偏りが,ツ反陽性率の地域格差を生じている可能性の検討をおこなった。農村地域において,平成5,6年,同7年,そして同8,9年の異なった3人の医師による,それぞれの年度区分のツ反陽性率は8.1%,13.2%,そして10.6%と,ほぼ同程度を示していた(表3)。さらに,農村地域の平成7年の学童のツ反判定をおこなった医師による,漁村地域の学校Aの同7年のツ反陽性率は29.8%となり,農村地域の学童の約8倍以上の陽性率を示した。これらの結果は,本研究のツ反陽性率の地域格差が,医師によるツ反判定の技術的偏りから生じている可能性も少ないことを示唆している、と考えられた。
一方,学童自身の要因がツ反陽性率に及ぼす影響の検討では,対象者の年齢を3等分し,各年齢区分毎のツ反陽性率を求めたが,傾向検定上,有意の傾向は認められなかった。しかし,肥満およびやせ傾向による男女計の体格別ツ反陽性率で,20%以上群36.8%>0-20%群24.5%>0%未満群17.8%となり,傾向検定上,有意を示した(p<0.01)。この傾向は,男子および女子でも認められたが,検定では男子の漸減傾向に有意が認められた(p<0.01)。これらの結果は,学童の体格がツ反陽性率に対する影響要因であることを,示唆していると考えられる。さらに,この学童の体格がツ反陽性率の地域格差とどのような関連性を有しているのかを,性別と地域万町の肥満およびやせ傾向別ツ反陽性率の比較対照から検討した(表5)。男子の検討では,3地域とも,20%以上群が約40%のツ反陽性率を示し,かつ,各地域内のツ反陽性率の検討では,20%以上群>0-20%群>0%未満群の傾向を示した。しかし,0-20%群と0%未満群では,それぞれの3地域間の比較で,漁村地域と中間地域のツ反陽性率の差は少なかったが,農村地域ではこれら2地域よりもツ反陽性率が低く,双方の群において,約2分の1以下となっていた。女子では,各地域内の体格別ツ反陽性率が20%以上群>0-20%群>0%未満群となる傾向が,男子ほど,明確ではなかった。しかし,同体格者による3地域間のツ反陽性率の比較では,3群とも漁業地域>中間地域>農村地域の傾向を認めた。これらの結果から,学童の体格と体格以外の各地域特有の特性が,それぞれの地域の学童のツ反陽性率に影響を及ぼしていると考えられた。
栄養学的観点から判断した場合,ほぼ同年齢で,かつ同じ小学一年生という学童の各栄養素等の総摂取量と総消費量の出納は,概ね,肥満およびやせ傾向(%)の多い学童の方が,その小さい学童よりも一日当たりのエネルギー・栄養素の総摂取量と総消費量との差が大きい,と推測しうる。さらに,同体格の学童どうしの比較では,総エネルギー摂取量と同消費量の差は,概ね,同等と推定しうる。しかし,学童が居住する地域特有の食糧事情,すなわち自給の度合い,あるいは購入の簡便さ等の諸条件が,その地域の食習慣を形成する大きな要因であるため,それぞれの地域の各栄養素摂取量の構成上の特徴も,それぞれの地域の食習慣に大きく左右されることとなる。それゆえ,各栄養素摂取量の構成上の地域差が3地域間の学童のツ反陽性率の地域格差に反映している可能性も推測される。