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域内(図1)の,平成5-9年度の小学一年生668人(男子310人,女子358人)を対象とした。内訳は,漁村地域の学校A244人(男子101人,女子143人)と同B66人(男子35人,女子31名),中間地域の同C59人(男子32人,女子27人)と同D86人(男子43人,女子43人),そして農村地域の同E179人(男子83人,女子96人)と同F34人(男子16人,女子18人)である。

BCG接種は小学校A,同BとD、同C,そして同EとFの4区分にて,それぞれ固定した4人の医師が対象学童の,概ね1才未満におこなっていた。BCG接種の精度の評価として,漁村地域,中間地域,そして農村地域に住み,将来同地域内の小学校に通学予定となる保育園児(3-5才)376人のBCG接種針痕(9個以上)の地域別保有率を検討した。

ツ反の陽性判定は発赤長径10mm以上であり,その判定者については,農村地域(小学校EとF)以外はBCG接種と同じ医師達が担当した。学校EとFについては,平成5,6年度のツ反判定は上記以外の一人の医師が,同7年は漁村地域の学校Aの校医が,そして同8,9年は著者が担当した。

学童の体格についての評価は,学校保健統計調査報告書(文部省)による標準体重を基に,対象者の小学校入学時の身長(cm)と体重(kg)から肥満およびやせ傾向(%)を求めて,おこなった3)

尚,平成5-9年の対象学童とその家族には結核の発症はなく,平成4-8年の3地域全体のBCG接種前の乳幼児584人のツ反陽性率は0.2%であった。したがって,本研究は結核の自然感染が学童のツ反陽性率に影響を及ぼす可能性が皆無に近い状態でおこなわれていた,と考えられた。統計上の検定は,カイ二乗検定とCochran-Armitageの傾向検定を用い,それらのp<0.05を有意差ありと判断した。

 

表1 小学一年生の学校別及び地域別ツ反陽性率

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*( )は地域内に所在する小学校を示している。

 

表2 地域別保育園児のBCG接種針痕(9個以上)

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*対象者の年齢は3-5才である。

 

表3 農村地域の小学校EとFの学童のツ反判定者別ツ反陽性率

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*Hは漁業地域の小学校Aの平成7年のツ反判定も担当した。

 

III. 研究結果

 

A 地域別および学校別ツ反陽性頻度(表1)

学童の学校別ツ反陽性頻度は,学校A244人中74人(30.3%),同B66人中23人(34.8%),同C59人中14人(23.7%),同D86人中21人(24.4%),同E179人中20人(11.2%),そして同F34人中1人(2.9%)となった。地域別ツ反陽性頻度では,漁村地域(学校AとB)310人中97人(31.3%)>中間地域(同CとD)145人中35人(24.1%)>農村地域(同EとF)213人中21人(9.9%)の傾向を示した。

B 保育園児のBCG接種針痕(9個以上)の保有頻度(表2)

園児の地域別BCG接種針痕の保有頻度は漁村地域117人中7人(6.0%),中間地域96人中9人(9.4%),そして農村地域163人中11人(6.7%)となり,3地域間の保有率の差に,検定による有意は認められなかった。また,農村地域のBCG接種後3カ月目の0-1才児の針痕保有率は30人中30人(100%)であった。

C ツ反判走者によるツ反陽性率の偏りについて

学校A,同BとD,そして同Cの学校区分毎に,特定の3人の医師によるツ反結果は,既に,表1で示した。農村地域の学校EとFのツ反は,例年,同一の医師によりおこなわれ,平成5,6年,同7年,そして同8,9年の3つの年度区分のそれぞれの3人の医師による男女計のツ反陽性頻度は,86人中7人(8.1%),38人中5人(13.2%),そして85人中9人(10.6%)であった(表3)。また,同7年に農村地域の学童の判定をおこなった医師による同7年の漁村地域の学校Aの同7年の男女計ツ反陽性率は47人中14人(29.8%)であった。

 

 

 

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