過疎地域に住む学童のツベルクリン反応に関する疫学的研究
―特に,その影響要因について―
新潟県・寺泊町国民健康保険診療所
田中 敬三
要旨
漁村,農村,そして生活様式等が双方の中間(中間)の3つの地域の平成5-9年の学童668人のツベルクリン反応(ツ反)と,その影響要因に関する検討を行い,以下の結果を得た。1. 地域別ツ反陽性率では,漁村31.3%>中間24.1%>農村9.9%となった。2. 保育園児でのBCG接種瘢痕の地域格差は,殆ど認められなかった。3. 陽性率と年齢との関連はなく,男女計の肥満およびやせ傾向による体格別の検討では,20%以上群36.8%>0-20%群24.5%>0%未満群17.8%の傾向を示した(p<0.01)。4. 性別と地域別による体格と陽性率の検討では,特に0-20%群と0%未満群において,男女とも,漁村>中間>農村の傾向が認められた。
以上の成績から,学童の体格と学童が居住する地域の食習慣等の特性が,ツ反陽性率への影響要因である可能性が考えられた。
I. 緒言
結核予防上,ツベルクリン反応(ツ反)はBCGワクチンによる免疫効果を評価する重要な指標となっている。
一方,学校保健統計調査報告書(文部省)による小学一年生のツ反陽性率の全国平均は,近年,30%台と低率を示し,改善すべき重要な公衆衛生上の課題の一つとなっている1)。この原因として,昭和49年以降のBCG接種の定期化,そしてBCG接種の技術的要因等が指摘されてきた1)2)。しかしながら,被検者である学童の諸要因のツ反陽性率に及ぼす影響についての検討は,本邦では皆無である。
著者は,新潟県内の過疎地域の学童を対象に,ツ反陽性率とその影響要因に関する疫学研究をおこない,興味深い知見を得たので,ここに詳述する。
II. 研究方法
新潟県内の著者の診療圏内の漁村,農村,そして立地条件と生活様式が双方の中間(中間)である3地