海の空気には病原菌やアレルゲンがなく,温度,湿度も高く安定していて,呼吸機能によい影響を与える。
われわれの行っている小児気管支喘息の治療も,病院の海に囲まれた立地条件を最大限に利用している点では海洋療法の一環をなすものと見られている。
4. 親子の離断・接合とIQの上昇
本来恒常的であるとされている知能指数IQについて,京大NX知能検査を使用して,入院時,入院後,退院時の3回実施して検討した8)。対象は小2より中3までの喘息児49名である。
IQは入院時平均92.3,入院後102.9,退院時109.3となり,平均18.0の大幅な上昇がみられた(表(16)及び表(17))。
学年別では小4と中3に山がみられて,二次性徴との相関が考えられた。YG検査成績,身長増加率との相関は低く,体重減少者(肥満解消者)に上昇する傾向がみられた。
V 予後成績
A:長期予後アンケート調査
平成10年8月末現在で平均1年間の長期入院施設療法を受けて退院した喘息児は915名,平均1週間の夏季喘息学級に参加した喘息児は3,648名である。
計4,558名の小児喘息児と関わったことになるが,進学,就職,結婚などで所在不明のものも多い。そのうち退院後2年以上を経過した喘息児に対して,1994年にアンケートによる予後調査を行い,1,946名から回答を得た。その結果は1995年の日本アレルギー学会春季学術集会で発表したが,その大要が表(18)である。
全体的な予後は寛解及び薬物を必要としない略寛解が75.6%で,諸家の報告と比較してアレルギー学会の重症度分類で入院時重症20.3%,中等症79.7%と比較的難治性の喘息集団としては,極めて良好な成績と云えよう。
死亡は男児17名,女児5名計22名で,13歳から19歳に集中しており,そのうち喘息死の明らかなものは14名であった。
退院年度による予後の変化を示したのが表(19)である。1990年頃より死亡例,悪化例が減少傾向を示しているが,これはアレルギーや薬物の知識が普及し,また新薬の開発も進んでいる結果かもしれない。しかしこの結果は全国的傾向を示すものでなく,思春期喘息の増加,成人喘息死の増加は続いているので,慎重な対処が必要である。
B:寛解要因調査
小児気管支喘息児で緩解したもの706例について調査した結果が表(20)である。医師の直接関与部分が11.3%と少ないが,これは喘息児達の自己評価が高く自我の確立した思考法の裏返し現象として,むしろ歓迎すべきことであろう。
自己管理については,なお一層の一般患者に対する教育・啓蒙が求められる。