それぞれのサークルはその年代で越えねばならないハードルである。近年は性成熟促進現象が世界的規模で起こっており,わが国の初経年齢も11.7歳と30年前より2歳も加速しているので,このサークルの順列もやや前倒しに見る必要が出てきた。
この心理モデルで,攻撃的自我がどこに向かうかによってさまざまな症状を呈する。自己に向かうとき心身症になり,家族のサークルに向かうとき家庭内暴力となり,近隣に向かうとき不登校,校内暴力となると考えられる。
小児気管支喘息児を親から切離して施設に入院させると,発作は殆ど消失する。1930年にPeshkinの提唱した親子離断術(Parentectomy)は,その成績が極めてすぐれており全世界に普及していったが,これは不適切な心理的親子関係からの解放が主役であったと考えられる。
退院後の家族関係を適切に用意するために行うのが親子接合術(Parentostomy)である。その手段を表(11)に示した。
施設長期入院におけるわれわれの治療段階を,吾郷5)の提唱する心身医学的療法段階と対比したのが表(12)である。
2. 集団療法の作用点
気管支喘息児の喘息発作を含めて症状が似ていること,家族関係や心因関与の自覚があること,年齢・発育状況が近接していること,など集団療法には極めて好都合であり,その作用の主なものは次の3つに集約される。
1)連帯の作用:喘息児は家族の中で孤立しており,健康児に強い劣等感をもっている。集団化することによって患児同士の受容と支持が生じる。このことがプラスの自己イメージのリアンカリングとなって定着する。
2)競争の作用:鍛錬や日常生活の躾を通して競争がいつも行われる。行動の結果が患児にとって報酬となりオペラント強化子として作用する。集団には絶えず新しい参入者があるので,当初下位評価であったものも日数がたてば必ず上位評価となり,アイデンティティが確立される。泳力や走力の記録,写生や演劇の表彰などその例である。