5. キャンプ中の声量の変化をサウンドレベルメーターで測定したが,キャンプ開級時の平均77dBが閉級時には88dBと全参加児の声量が大きくなり,低学年,男児での増加が目立っていた。POMS法の検査と声量測定の結果は,喘息キャンプが短い期間のうちに心理的に積極性,協調性を育てる行事であることを示している。
IV 長期入院療法
A:意義
施設入院によって喘息児の発作が消失する現象は,1) ハウスダストなどのアレルゲンからの隔離 2) 心理的に悪循環に陥っている親子関係の遮断 3) 呼吸法,排痰法の習得と鍛錬による自律神経の安定 4) 発作時の充分な対処への安心感 5) 集団生活による好ましい緊張状態 6) 在宅よりも容易な食物アレルゲン対策やスキンケア、など多彩な治療条件の複合効果と考えられる3)。
1930年にPeshkinが唱えた親子離断術(Parentectomy)は,1959年にわが国の遠城寺が「風の子教室」を開催するなど,平均1年の入院期間をめどとする長期入院療法として全国に普及して行った。
近年に至って,退院後の不調から施設療法の必要性に疑問を抱く向もあり,われわれは物理的には生活環境からのアレルゲンの除去を指導し,心理的には新しい家族関係の再構築をはかる各種の心理的対処を行っており,後者の技法を親子接合術(Parentostomy)と称して,この言葉は学会でも漸く認められるようになってきた。
施設療法はかつて全国の約40の施設で行われていたが,新薬の開発,喘息の軽症化と共に少子化が進み,実施中の施設は現在では半減している。しかし気管支喘息に付随する不登校,いじめ,肥満,アトピー性皮膚炎など他のアレルギー疾患や心身症の合併は増加しており,これらに必要な治療法として,われわれは担当する医療チームを挙げて更に研究を進めねばならないと思っている。
B:施設と入院条件
上天草総合病院は平成3年に新築移転したが新館は6階建てでその3階が小児喘息専用病棟である。体育館,20m温水プール,心理検査室,家族用体験宿泊室,保育室等を内包している。入院する小児喘息児は,各地の医療機関でも主治医から長期入院の適応と認められたもので,重症難治例が多い。最近は喘息以外のアトピー性皮膚炎,アレルギー性結膜炎,アレルギー性鼻炎のほか不登校,いじめ,肥満などを合併したものも増加傾向にある。
就学年齢の喘息児は,龍ヶ岳町内の3つの小学校,2つの中学校に通学する。そのため病院には2台のスクールバスがある。児童生徒は原籍校はそのままの区域外通学の扱いである。入院期間は平均13カ月であるが、これは中学生では高校進学に支障を来さないようにとの配慮にもなっている。
日常生活は規則正しい鍛錬を主体とするものであるが,主として男性の生活指導員4名が担当している。
C:日課と行事
喘息児は男女別に6〜7名の異年齢構成の部屋毎に班を作る。平日の日課及び休祭日の日課は表(7)・(8)の通りである。
朝のマラソンは病棟の周辺500〜1,000mを走るも