II 親子喘息教室
小児喘息の治療には,喘息児とその家族に対して具体的な対処法を教えねばならない。昭和61年から始めた熊本市親子喘息教室には,上天草病院から小児科医,看護婦,生活指導員,臨床心理士,看護学生やボランティアなど約30名が出向いて指導に当たった。
約4時間の行事であるが,事前に質問を受け付け,各家庭の畳,布団のダニ棲息数調査も行っている。講習の内容は冷水摩擦,ぜん息体操,腹式呼吸,タッピング,排痰訓練,服薬や吸入療法の指導などである。現在まで12年間の行事の概略は表(2)に示した。
ダニアレルゲンの測定法にはELISA法と個体数計算法とがあるが,われわれは当事者の視覚的な理解が比較的容易な後者を「熱追出し法」で行っている。昨年度のサマー・キャンプと併せて104家族のゴミ1m2当たりのダニ数検査結果では,ダニのいない家庭13(12.5%),いる家庭91(87.5%)で,内200匹以上と大量のダニのいる家庭は57(55%)となり,近代住宅のダニ汚染状況1)が明らかになった。同時にその対策も立てやすくなった。
III 夏季喘息学級とサマー・キャンプ
A:経緯
昭和40年夏から熊本大学体質医学研究所小児科学講座と提携して,上天草病院の病室を利用する喘息学級を始めた。昭和47年の天草大水害による中止を除き,毎年夏休み期間に2乃至3回の喘息学級を実施している。昭和56年度から,大牟田市の公害認定喘息児のサマー・キャンフ°も環境庁の支援事業として受け入れることになり現在に至っているが,内容が類似しているので一律に揚げてみた。それが表(3)である。
期間は6日乃至14日間で,全国各地で行われている同様の主旨のキャンプより期間が長いこと,主治医の推薦による患児のみを受け入れていること,必要な検査を行って必ず主治医に報告することなどを特色としている。
患児をサポートするスタッフは,常勤の病院職員のほか,10年20年を経たかつての参加喘息児が成人となって,ボランティアとして活躍しているのも大きな特色である。
B:現況
発足当初は,九州本土の喘息児を船で天草に運んでキャンプ生活を行っていた。スタッフも医師と看護婦だけで,蚊帳つりから夜尿・夜驚の世話まで夜昼なしに行っていた。その後施設や専門職種の充実につれて,一般病院や開業医で行えないアレルギーや心理の検査,ダニ数カウントなども実施するようになり,また行事を愉しくするための各種のイベントも工夫して現在に至っている。表(4)はその一例として第66回(平成10年度)のものを掲げた。
C:効果
夏季喘息学級やサマー・キャンプは,気管支喘息児の有力な治療手段として全国的に行われているが,その長期的保健効果や医療費節減効果については十分な検証がなされていなかった。これらの問題点に関して,医療施設利用型キャンプの立場から調査研究を行った。
1. 対象は,1995年に上天草総合病院喘息センターで開催された第60回,第61回の喘息キャンプに参